銅の微細パターンを、簡易的かつ高速に形成する加工技術を開発 立命館大学

立命館大学大学院の研究グループは2024年1月25日、銅の微細パターンを簡易的かつ高速に形成する加工技術を発表した。薬液等を一切必要としないため、環境負荷の低減と費用対効果の向上が期待できる。

銅の微細なパターンは近年、金属配線をはじめとする電子機器への応用が進んでいる。銅表面にパターンを形成させる加工技術は、フォトリソグラフィと呼ばれる方法が一般的だが、レジストや薬液を必要とする複雑なプロセスによる加工コストの増大、環境負荷が大きいことなどが課題になっている。そのため、低コストかつ簡易的に、マイクロ・ナノレベルのパターニング精度を達成できる加工技術の開発が求められていた。

研究グループは、電気分解(電解)によって銅がイオン化することを利用した加工技術である電解加工に着目した。電解により銅をイオン化し、液体に溶出させることで加工する電解加工は、銅表面の意図した部分にのみ加工を生じさせ、任意のパターン構造を得るが、高精度パターンの加工が難しいことや、多量の薬液を用いることなどが課題となっている。

そこで、固体高分子電解質膜(PEM)という特殊な膜を、電解加工で使用される薬液の代わりに使用。PEMの表面上にパターンを持たせた「PEM スタンプ」を用い、銅の表面との接触部における電気化学反応により、一工程で数百ナノメートルの精度のパターンを形成できることを明らかにした。パターンは、銅の表面にスタンプを押すように簡易的かつ高速に形成できる。また、電解によりイオン化した銅イオンは、PEM中を移動して、再び金属として陰極表面で析出されることがわかった。

本技術により加工された銅表面の顕微鏡像(左)鮫肌構造、(中)ホール構造、(右)Line & Space構造

研究の成果は、銅表面の微細パターン加工にて、複雑な工程や特殊な装置なしに、簡易的に高精度パターンを形成できるため、加工コスト低減につながることが期待される。また、フォトリソグラフィで使用されるレジストや薬液を一切必要としないため、環境負荷の低減、費用対効果の向上も期待できる。非常に簡易な加工技術でもあり、産業への導入も容易であると期待される。

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