光通信を大容量化かつ低消費電力化する「圧縮シェイピング」技術を開発 三菱電機

三菱電機は2022年7月19日、光通信を大容量化かつ低消費電力化する「圧縮シェイピング」技術を開発したと発表した。2030年までの実用化を目指す。

データ通信の大容量化や高速化が進むにつれて、信号伝送時の歪みや雑音などの影響が増し、符号誤り(デジタル符号の0と1が反転してしまう現象)が多く生じる。誤りを修正する符号処理は多くの電力を用いるため、大容量化と低消費電力化との両立が困難となる。

また、符号誤りを低減すべく信号点間同士が重なりにくいように信号点間距離を広げると、全体のエネルギーが大きくなる。これにより、光ファイバー通信の制約に適合しなくなることが課題となっていた。

同社が今回開発した技術は、通信トラフィックのデータ状況に合わせて、0と1のビット列で構成されるデータのうち、エネルギーの小さい信号点(データを割り当てるための複素数平面上の分布点)に0の割合が多いデータ(無効データ)を自動的に割り当てる「シェイピング」とデータ圧縮を同時に行うものだ。

無効データをエネルギーの小さい原点付近の信号点に割り当てることで、全体のエネルギーを抑えながら信号点間の距離を開けることに成功した。歪みや雑音の影響があっても信号点同士が重なりにくいため、符号誤りが減少する。

「圧縮シェイピング」技術の原理(64 信号点の例)

同技術により、誤りを訂正する符号処理の電力消費が従来の8分の1以下となった(信号点の発生確率を均一とし、誤り訂正により全データビットを均一に符号化した場合)。光送受信器の大容量化も可能となる。

また、同技術をFPGAに実装し、最大1.6Tビット超/秒の光通信用符号処理速度を実証した。同社によると、世界最高の光通信用符号処理速度だという。

5から4194304(2の22乗)まで信号点数の変更が可能なため、22ビットまでデータを適用可能。1台の光送受信器で性質が異なる通信トラフィックの複数宛先との送受を可能とする「仮想光チャネル」技術に寄与する。仮想光チャネル技術は、情報通信研究機構(NICT)の委託研究において開発が進められている。

今回の研究開発の一部は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の委託研究「超並列型光ネットワーク基盤技術の研究開発」による成果となっている。また、三菱電機は、同委託研究「Beyond 5G通信インフラを高効率に構成するメトロアクセス光技術の研究開発」においてさらなる取り組みを進めている。

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