海洋微生物の高効率なポンプの仕組みを解明

オレゴン大学の研究チームは、海洋微生物の尾が逆流を防ぐために、ポンプのように働く仕組みを解明した。同ポンプのユニークなデザインは新たなフィルターシステムのヒントになるという。

同研究成果は2023年11月15日、「Journal of the Royal Society Interface」誌に掲載された。

同研究の対象生物は、オタマボヤという体長1mm程の動物プランクトンだ。オタマボヤのくねくねとした尾は、海中を進む推進力となり、小さな餌の粒子を集めるポンプの駆動力にもなる。

オタマボヤは、食事の時間になると、体を包みこむハウスと呼ばれる構造物を表皮から分泌する。尻尾の動きによる水流で、ハウスの入水口から餌となる植物プランクトンを含んだ海水を取り入れ、ハウスにあるフィルターで餌をろ過して海水を流出し、餌を口へと導く。そして、食事を終えると、ハウスを捨てる。

研究チームは、顕微鏡と高速ビデオカメラを使って、さまざまな条件下で、ハウスで包まれたオタマボヤの周りの液体と小さな粒子の流れを追跡した。その結果、水と餌の粒子は、逆流することなく尾と平行に移動し、ハウスのフィルターを通過してオタマボヤの口へと導かれることが分かった。

ポンプ機能のメカニズムは、尾がハウスの中にぴったりと収まり、数カ所で側面に接触していることに起因している。尻尾が前後に小刻みに動くと、面ファスナーのように特定の取り付け位置でハウスを密閉したり開放したりする。密閉状態によって圧力がかかり、ハウス中の液体が絶えず前方に押し出され、逆流を防ぐ仕組みだ。

オタマボヤのポンプシステムは蠕動(ぜんどう)ポンプの一例だ。現在、排水処理場などのさまざまな工業用途に使われている蠕動ポンプは、腸の動きのように外部からの絞り込みによって液体を押し出す。しかし、オタマボヤのポンプの推進力は、ポンプ内部の尾の動きによってもたらされるのだ。

同ポンプシステムは、可動部を保護して摩耗を抑える、より効率的な設計である可能性がある、と研究チームは考えている。オレゴン大のKelly R. Sutherland准教授は、「オタマボヤの生物ポンプに関する新たな理解は、建築環境における次世代の水や空気フィルターのヒントになる可能性があります」と説明した。

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How a sea animal with a ‘snot palace’ could inspire better pumps | Around the O

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