無人航空機(UAV)のデジタルツインを開発――リアルタイムかつ自律的に飛行経路変更も可能に

無人航空機(UAV)向けに、自らの状態を予測し、自律的な意思決定をする予想デジタルツインを開発するプロジェクトについて、SC19(スーパーコンピューティング・カンファレンス 2019)で詳細が公開された。このプロジェクトは、テキサス大学オースティン校やMITなどが共同で行ったもので、テキサス大のKaren Willcox教授がSC19の招待講演者として発表した。

UAVを使って荷物や人を運ぼうとした場合、UAVが自らの構造的な状態をモニターし、正しい決断が自律的にできることが不可欠だ。そのためには、UAVのリアルタイムな監視に加え、仮想空間においてUAVを評価できるモデル、いわゆるデジタルツインの構築が重要となる。

デジタルツインは、UAVだけでなく、製造業、石油精製、F1レーシングカー向けなど、仮想モデルによる設計、性能改善や寿命予測が必要なエリアにおいて開発が加速している。Gartnerによる2017年、2018年の戦略的技術トレンドトップ10の1つに選ばれた技術だ。

今回発表されたデジタルツインは、UAVの作動具合の詳細をキャプチャーする物理モデルを用いて、UAVの各構成要素と統合された全体を表現している。また、機内に搭載されたセンサーのデータを取り込み、その情報をモデルと統合して、UAVの状態をリアルタイムに予測する。これにより、墜落などの危険性、リスクを回避するための飛行ルート変更などの決定を、実際の飛行中にすることができる。

Willcox教授は、UAVで発生する複雑な物理的相互作用をモデル化するため、機体全体をシミュレートするのではなく、翼の一部など機体を断片のモデルへと分割し、幾何学的パラメータ、材料特性、その他の重要な要因を独立して計算するアプローチをとった。各コンポーネントは偏微分方程式で表され、高精度で有限要素法と計算メッシュを使用して各セグメントでの飛行の影響を明らかにし、機械学習のためのトレーニングデータを生成した。将来的には、スーパーコンピュータを使って、より複雑な飛行シナリオを考慮したさらに大きなトレーニングセットを生成する予定だ。

これらにより、意思決定に必要な精度を維持しながら、1000倍のスピードアップを可能にした。つまり、数時間あるいは数分かかったシミュレーション時間を、数秒に短縮できたということだ。

Willcox氏が示したデモンストレーションでは、障害物コースを進むUAVが、自身の状態の悪化を認識し、安全に帰還するために、より確実なルートを計画できた。このようなテストは、UAVが将来広く配備されるためには欠かせないものとなる。

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Developing a Digital Twin

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