ヒートガンでいつでもデザインを変えられる――MIT、熱活性化型糸を使った衣服「4D Knit Dress」を開発

Credits:Image courtesy of MIT Self Assembly Lab

マサチューセッツ工科大学(MIT)のSelf Assembly Labとハイテク・アパレルメーカーMinistry of Supply(MOS)は、熱で活性化する糸を利用して瞬時にデザインやフィット感を変えることができる「4D Knit Dress」を開発し、2023年後半にボストンのMOS旗艦店で披露した。消費者、生産者双方にとって、従来のファッションよりも持続可能な衣服になる可能性がある。

4D Knit Dressは、熱活性化型糸を使用してコンピューター編みしたドレスの形状を、ロボット装置による加熱で変化させ、個人にぴったりのフィット感や異なるスタイルを生み出す。熱活性化型糸の配置によって、ピンタック、プリーツ、エンパイアウエスト、シンチウエストなど、さまざまなスタイルの変化を楽しむことができる。

Self Assembly Labでは、数年前から形や特性、断熱性、呼吸のしやすさを変えることができるダイナミック・テキスタイルの研究に取り組んできた。セーターやフェイスマスクなどに応用した例があり、4D Knit Dressはこれまでの集大成だと、建築学科の准教授でありSelf Assembly Labの創設者でもあるSkylar Tibbits氏は述べている。

熱活性化型糸は加熱すると繊維が短くなり、特定範囲で束となる。衣服の繊維を活性化するためには、正確な位置に熱を加える必要がある。また、加熱温度と熱を加えるタイミングの設定も重要だ。正確に特定の場所を加熱できるよう、産業用よりもコンパクトなヒートガンを使用している。

MOSの共同設立者兼社長のGihan Amarasiriwardena氏によると、効率的な衣服の生産はファッション業界における大きな課題だという。シーズンの流行を推測する必要があり、実際の流行やサイズによって売り切れなかった衣服は、大幅な値下げや場合によっては廃棄処分されることがある。

4D Knit Dressは、安価で流行に敏感であり、消費者に簡単に捨てられるファストファッションと対極にあるとTibbits氏は言う。4D Knit Dressは、従来の衣服のように「切って縫う」工程とは異なり、糸から編まれた一枚布となるため無駄がほとんどない。4D Knit Dressは、例えば胸元のピンタックなど一つのデザインを何カ月も着用した後に、再び熱を加えてデザインを変えることができる。流行や好みの変化に対応でき、多種類のサイズを展開する必要がないため、小売店がシーズン後に抱える不良在庫問題を解決できるかもしれない。

MIT建築学科を2023年に卒業し、MOSと共同で4D Knit Dressを開発したSelf Assembly Labの研究者兼テキスタイルデザイナーであるSasha McKinlay氏は、「この研究プロジェクトが、洋服との関係を見直すきっかけになってくれたらと思います。自分自身や季節、流行の変化に合わせて、1枚の服を変化、進化することができたらどんなにワクワクすることでしょう。私は皆さんがそう思ってくれることを期待しています」と述べている。

4D Knit Dress: Transforming Style from Self-Assembly Lab, MIT on Vimeo.

関連情報

Is this the future of fashion? | MIT News | Massachusetts Institute of Technology

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