競走馬のケガを未然に防ぐ――モーションセンサーで負傷リスクを検出する技術を開発

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ワシントン州立大学は2024年7月11日、同大学の研究チームが小型モーションセンサーを用いて競走馬のレースや調教を追跡し、収集したデータから負傷リスクに関連するわずかなストライド(歩幅)の変化を特定することに成功したと発表した。競走馬はレース前に徹底的な検査を受けるものの、現状では致命的なケガが発生している。しかし、研究チームが収集したデータから、ほとんどの大ケガをする馬には明確なストライドパターンがあることがわかった。そのため、致命的な故障に至る前に、介入することが可能だとしている。

研究チームが使用したセンサーは、競走馬の負傷リスク軽減デバイスを開発するStrideSAFEのもので、1秒間に2400の動きを記録でき、重さはわずか85gにすぎない。このセンサーは、馬が脚や胴体を動かすと速度と方向の変化を測定し、ストライドパターンのグラフを作成する。各馬のデータはアルゴリズムによって処理され、高パフォーマンスの健全な競走馬から導き出された理想的なストライドと比較される。また、6500回以上の出走データから、致命的なケガを負った競走馬のストライドとも比較する。理想的なストライドからどの程度離れているか、またケガに関連したストライドとどの程度似ているかにより、各馬は5段階のリスクに分類される。

最も理想的なストライドに近いカテゴリー1の馬に比べて、リスクが最も高いカテゴリー5の馬は大ケガを負う可能性が950倍も高い。追跡調査をした馬のうち、70%がカテゴリー1に分類され、カテゴリー5に該当した馬は3.5%だった。

レースでは1000頭出走するごとに約1.25頭の馬が致命傷を負うことがわかっている。しかし、レース前の検査では健全だと主観的に判断されることが多く、パフォーマンスの低下を示さない馬も多い。研究チームは、カテゴリー5のように3.5%まで絞り込むことができれば、検査結果による介入がより容易になり、ケガを防ぐことができると述べている。実地試験として2023年4月29日から7月2日にかけて、アルゴリズムのテストと改良のためにケンタッキー州の競馬場で出走予定の馬にセンサーが取り付けられた。3歳の牡馬と4歳の牝馬がカテゴリー5に分類され、画像診断の結果どちらも致命的な筋骨格系障害のリスクが高まっていることが確認された。これらの馬は、レースに復帰する前に回復する時間が与えられ、致命的なケガを防ぐことができたという。

論文の筆頭著者であり馬外科のレジデントであるDenise Mc Sweeney博士は、「この技術は大きなインパクトを与えるでしょう。センサーにより馬と騎手の命を救うことができるのです」と述べ、すべてのサラブレッドのレースと調教で標準になることを望んでいる。

研究成果は、『Journal of the American Veterinary Medical Association』誌に、2024年6月21日付で公開されている。

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