接着剤を使わずに木材と金属などを接合する技術――自動車産業などへの応用を想定

Image source: Wolf - TU Graz

オーストリアのグラーツ工科大学の研究者たちは2024年8月28日、3Dプリンティング技術と超音波接合技術を用いて、木材と金属、ポリマーの複合材を極めて強固に接合する技術を発表した。

木材は再生可能な素材であり、気候変動に左右されず軽くて丈夫であることから、自動車などの工業製品において魅力的な材料だ。ただし、自動車を構成する金属やポリマー複合材料などを、いかに強固に木材と接合するかが課題の一つであった。

同大学の研究者たちは、接着剤やネジを使用しない、極めて強固な接合を実現する技術を2種類用意してテストに成功した。同技術の木材への応用手段は特許出願中で、航空機、自動車、家具産業への応用が期待される。

テストで使用した素材は、木材としてブナ、オーク、ポリマー、複合材として炭素繊維強化ポリアミドとポリフェニレンサルファイド、そして金属材料としてステンレス鋼316L、Ti-64合金がそれぞれ選択された。開発した技術「AddJoining」は、ポリマー複合材でできた部品を、3Dプリントプロセスを使って木材の表面に直接貼り付けてプリントする。プリントされた材料は、木材の気孔に浸透し、そこで接着剤と木材の反応に似た化学反応が起こる。

機械的な負荷試験後の接合部の破断面を見ると、木材の気孔の中にポリマーが確認できる。また、ポリマーの中に破断した木材繊維も確認できたことにより、破断が接合部ではなく、木材とポリマーで起こったことを示唆していると、研究チームは報告している。この試験は未処理の木材表面で実施されたが、レーザーによるテクスチャリングやエッチングによって木材にミクロあるいはナノ構造を形成することで、気孔を増やして接合面を強化すれば、さらに耐久性の高い接合部を実現できる可能性がある。

超音波接合技術では、ソノトロードという装置を使用して、低振幅の高周波振動を木製部品に加える。ベースとなるポリマー複合材料部品と接触させると、摩擦によって界面に熱が発生し、ポリマー部品の表面が溶融する。溶融したポリマーは、多孔質の木材表面に自然に浸透する。このとき、木材内で再固化したポリマーによる機械的インターロックと接着力が組み合わさり、極めて安定したスポット接合が実現される。この超音波接合技術は、局所的なスポット接合が正確に得られるため、大型部品や2次元構造物に特に適している。レーザーテクスチャリングなどで木材表面を前処理することで、さらに接合部を強化できる。

将来的には、自動車、航空機、家具業界のパートナーと協力して、この技術をさらに洗練させたいと研究チームは付け加えている。

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