- 2024-1-24
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ブルックヘブン国立研究所とコロンビア大学の研究チームが、二酸化炭素(CO2)からカーボンナノファイバー(CNF)を合成し、温室効果ガスを長年にわたって封じ込める技術を開発した。
同研究成果は2024年1月11日、「Nature Catalysis」誌に掲載された。
CNFは、炭素を骨格とするナノメートルスケールの太さの繊維で、優れた強度と熱伝導、電気伝導などを合わせた有用材料だ。CO2から合成したCNFをセメントに入れて強化セメントにすることで、CO2をコンクリート中に閉じ込め可能だ。
しかし、従来のCO2からCNFを合成する方法は、1000℃以上の温度で直接合成するため、CO2削減にはエネルギー効率が悪く非現実的だった。研究チームは、400℃というはるかにエネルギー効率のいい条件で、CO2からCNFを合成する方法を開発した。同手法は、合成過程を大きく2段階に分解し、電気化学反応と熱化学反応を利用し、それぞれ異なる触媒を使用することで、常圧と比較的低い温度といった環境での合成を可能にする。
一酸化炭素(CO)を合成する方がはるかに低温でCNFを合成できるため、一段階目の反応では、パラジウム触媒を用いてCO2と水(H2O)をCOと水素(H2)に電気分解する方法が採用された。同手法は、再生可能エネルギーであるH2を生産できるメリットもある。
次の熱化学反応では、鉄とコバルトの合金でできた熱触媒を使用し、COからCNFを合成する。熱触媒は、CO2からCNFへの直接変換に必要な温度よりもかなり低い400℃前後で作動する。
さらに、反応で用いる触媒はリサイクル可能で、商業的に入手可能なため、同手法は実用的だ。コロンビア大学のJingguang G. Chen教授は、「私たちの研究成果は、2段階の合成戦略によって、再生可能なH2を生産しながら、CO2から価値ある固体炭素製品を生産できることを示しています」と説明した。