炭酸カルシウムコンクリートを用いた建築物の建設に目途 東京理科大ら

東京理科大学は2024年10月1日、東京大学、北海道大学と共同で、炭酸カルシウムコンクリート(CCC:Calcium Carbonate Concrete)を用いて、建築物や土木構造物を実際に建設できる目途が立ったことを発表した。世界で初めて、ミスト法を用いた炭酸化促進技術を用いることで、廃コンクリートによるDAC(直接空気回収技術)が従来の50倍速となり、炭酸カルシウムコンクリートがカーボンネガティブな状態になることを明らかにした。

本研究では、廃コンクリートによるCO2回収の高速化、CCC硬化体の大型化/高強度化、CCCを用いた構造部材の耐震性/カーボンニュートラル性を確認し、CCCの実用化に目途が立った。CCCとは、大気中のCO2と廃コンクリートのみを原料として生成される炭酸カルシウムが結合材となって硬化体が形成される炭酸カルシウムコンクリートのことである。

構造物の解体で発生する廃コンクリートを粉砕し、4種類の粒度(粒子サイズ)に分級して、大気に粒度ごとに触れさせ、DACを実施した。その際、廃コンクリート粒子にミスト状の水分を一定間隔で供給し、湿潤状態と乾燥状態を繰り返すことで、廃コンクリート粒子中のカルシウム(Ca)と大気中の二酸化炭素(CO2)との反応を促進させた。その結果、分級せずに大気に放置したままの廃コンクリート粒子の場合の50倍速で、大気中のCO2を回収できた。

廃コンクリートによるDAC

炭酸化した4種類の粒度の廃コンクリート粒子を最密な状態になるように混合し、廃コンクリート粒子から製造した炭酸水素カルシウム溶液を加えて、練り混ぜて型枠に密に詰めた。50MPaの圧力を加えたときに、粒子同士が接触した高圧部分のカルシウムが溶液中に溶け出す。

炭酸カルシウムとして周辺の隙間に再析出し、粒子同士が結合した後、乾燥することでCCC硬化体が得られる。乾燥後に炭酸水素カルシウム溶液への浸漬、乾燥を繰り返すことで、さらなる強度増加を図ることができた。直径10cmの炭酸カルシウムコンクリート円柱体で圧縮強度38MPa(従来のコンクリートと同等の強度)を実現している。

コールドシンタリング法

直径100mm、高さ200mmの薄肉鋼管で被覆した状態で、建築基準法の定める最低強度12MPaを満たすCCC硬化体を製造し、それらを1層あたり5本ずつ並べ、鋼板を介して5層連結した。プレストレストを導入してCCC柱部材とし、耐震性能の評価として、逆対称曲げせん断載荷試験を実施した結果、CCC製の柱部材は十分な耐震性能を有していた。

CCC柱部材の耐震性評価試験

廃コンクリートの破砕、分級、DACに要するエネルギー、コールドシンタリングによるCCC製造に要するエネルギーの実測から求めたCO2排出量と、廃コンクリートのDACによるCO2回収量との合計値がマイナスとなり、CCCはカーボンネガティブなコンクリートであることを確認した。

CCCのカーボンネガティブ性

今後、国土交通大臣認定を取得し、実建築物の建設へと展開していく。将来、従来のコンクリートに置き換わることで、大気中の550億トンのCO2が回収され、地球温暖化抑制に大きく貢献することが期待される。

関連情報

DACCUSの炭酸カルシウムコンクリート 実用化に目途! ――NEDOムーンショットプロジェクト――|東京理科大学

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