化学燃料で回転する超分子モーターを開発

Astrid Eckert / TUM

ミュンヘン工科大学の研究チームは、化学燃料で回転運動を生み出す超分子レベルの人工モーターを開発した。特殊な分子で構成された、小さなリボン状のモーターで、エネルギーが加えられるとリボンがらせん状に丸まり、小さなチューブ状に形を変えて回転を始める。生物学分野以外で化学エネルギーを回転エネルギーに変換したのは、今回のものが初めてだとしている。血管内を移動して腫瘍細胞を検出するナノロボットなどへの応用が期待される。研究成果は、『Chem』誌に2024年9月16日付で公開されている。

生物学分野では、原始的な細菌である古細菌がATP(アデノシン三リン酸)を化学燃料として用い、鞭毛(べんもう)を回転させて移動することが知られている。しかし、これまでこのプロセスを模倣したモーターは存在しなかった。

今回研究チームが開発した人工モーターは、長さが数マイクロメートル、幅が数ナノメートルの小さなペプチドリボンだ。化学燃料の添加により構造が変化し、チューブ状に丸まって回転する。この変化は、顕微鏡下でリアルタイムに観測可能だ。燃料の添加量によってリボンの回転速度が制御でき、回転の方向が時計回りか反時計回りかは、リボンの分子構成によって左右される。

この人工モーターによってマイクロメートルサイズの物体を動かせることは実証されている。このことは、実用化に向けて非常に重要だ。また研究チームは、複数のリボンを集めれば、物体の表面を這うように動くことのできる微小装置「マイクロウォーカー」を作れるのではないかと考えている。

現在この人工モーターに使用している化学燃料は生体にとって有毒なため、さらなる改良は必要だ。しかし、将来的に体内で薬物を運搬するマイクロウォーカーなど、医療分野で応用できる可能性がある。

関連情報

Inspired by bacteria: Synthetic mini-motor with impressive power developed. – TUM

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