無線伝送で世界記録を樹立、5Gの約1万倍のデータ速度938Gbps/秒を達成 英UCL

Published in: Journal of Lightwave Technology ( Volume: 42, Issue: 20, 15 October 2024)

英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)は2024年10月16日、同大学の研究者らが無線伝送において新たな世界記録を樹立したと発表した。周波数5~150GHzの周波数帯域で、最大938Gbps/秒のデータ転送速度を達成した。

1Tbps/秒に迫るこの伝送速度は、英国における5Gの平均最高ダウンロード速度である約100Mbp/秒の9380倍の速さで、帯域幅は従来の無線伝送の世界記録の5倍以上となる。例えば、2時間の4KウルトラHD映画(データ量約14GB)を5Gでダウンロードする場合、100Mb/sでは19分かかるが、この新技術を使えばわずか0.12秒で済むという。この速度は、高速エレクトロニクスとミリ波フォトニクスという、既存の2つの無線技術を初めて組み合わせることにより達成された。

通常の無線ネットワークは、狭い周波数範囲の電波を使って情報を伝送している。Wi-Fiや5Gモバイルなど、現在の無線伝送方式は、主に6GHz以下の低周波数で動作する。しかし、この周波数帯は混雑しているために、無線通信の速度が制限されてしまう。また、現在の無線通信システムは、ユーザー端末と光ファイバー網の間を結ぶ最後の数メートルの容量が足かせで、高速データアクセスの需要増に対応し切れない。

これに対する同大学の研究者らのソリューションが、より多くの周波数を使用して帯域幅を拡大することだった。彼らは、無線技術と光技術を初めて組み合わせることによって、このボトルネックを解消し、より広範囲の無線周波数での情報伝送を可能にした。

研究者らは、5~50GHz帯で最大の性能を発揮する高度なデジタル/アナログ信号発生器を採用し、これに、光を使って無線情報を発生させる50~150GHz帯に対応するフォトニクス技術の組み合わせにより、新しいアプローチを開発した。この新技術によって、高い信号品質を維持したままで、5~150GHzという幅広い周波数帯域でデータを伝送できるようになった。

超高速で信頼性の高い無線ネットワークが実現したことは、無線通信の将来にとって極めて重要なものと期待されている。この技術は現在、実験室でのみ実証されており、商業化に向けてプロトタイプシステムを製作中だ。成功すれば、3年から5年で商用機器に組み込む準備が整うという。

最先端の通信ネットワークはいくつかの技術に依存している。光ファイバー通信システムは、大陸間やデータセンターから各家庭までといった、長距離にわたってデータを伝送する。一方、無線技術は、家庭用ルーターからWi-Fiで接続された機器にデータを送信するなど、短距離伝送の最終段階で使われることが多い。通信ネットワークのバックボーンとなる光ファイバーは、近年、帯域幅と速度において大きな進歩を遂げたが、世界中の家庭、職場、公共スペースで最後の数メートルを情報伝送する無線技術に同様の進歩がなければ、このような進歩も限定的なものになる。

無線技術の優れた点は、スペースに柔軟に対応できることだ。機器が複雑に配置された工場など、光ケーブル配線が困難な状況でも使用できる。新たな研究成果により、次世代デジタル通信インフラにおける無線周波数と光通信システムで達成された帯域幅と速度の増加に、無線技術を対応させることができる。

研究成果は、『Journal of Lightwave Technology』誌2024年10月15日号に掲載された。

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