霜の発生を100%防ぐ方法を開発――葉脈の形状がヒント

米ノースウェスタン大学の研究チームが、冬季に屋外の電線ケーブルや熱交換器などの表面に霜が発生するのを防ぐ、新しい手法を開発した。表面テクスチャを調整し、酸化グラフェンの薄膜層を被覆することによって、従来の最先端技術よりも1000倍も長い、1週間にわたって霜の発生を100%防止できる。この技術は容易に大面積へ拡大可能であり、割れや傷、汚れに対する耐久性も高い。屋外のインフラ設備に導入することによって、企業や行政機関は年間数十億ドルの維持管理費および電力効率損失コストを節約できると期待している。研究成果が、2024年10月30日に『Science Advances』誌に公開されている。

航空機の翼に霜が着くと、飛行に対する抵抗になり、しばしば安全な飛行が脅かされ、欠航や遅延をもたらす。冷凍庫や冷蔵庫の内部に着霜すると、電力効率が著しく損なわれる。また、着霜は屋外電線ケーブルを重くし、破断や停電を招いてしまう。自動車のセンサーを破壊して、正確に障害物を検知する能力を損なうこともある。特に、冬季の寒冷で湿潤な環境における屋外インフラ設備、電線ケーブルや熱交換器に発生する霜は、安全で効率的な設備稼働にとって障害になるため、産業分野や行政機関における重大な関心事だ。

「例えば、テキサスにおける2021年の電力危機では、160時間以上にわたる霜や氷、過酷な気象から生じた損害は1950億ドル(約30兆1789億8000万円)にも上った。極限的な環境条件において、頑丈で長期間耐える着霜凍結防止技術が重要になっている」と、研究チームは語る。熱交換器における着霜は古くから問題視されてきたが、近年になって一層注目を集めるようになり、霜形成の成長予測や除霜技術、冷却表面の濡れ性や微細加工などの研究が活発に行われようになった。

研究チームは、葉表面の凸凹形状のうち、凹型部分である葉脈には着霜が抑制されることにヒントを得て、実験およびシミュレーションを実施した結果、材料的要因ではなく形状的な要因に起因して、結露が波状表面の頂上で促進されるが、谷部では抑制され、谷部において凝結した少量の水は蒸発して着霜が抑制されることを見出した。これまでに5mm間隔で頂上と谷部が形成される表面テクスチャを設計し、谷部における着霜を80%低減できることを発見したが、今回の研究では、谷の平坦部に600μm厚さの酸化グラフェンを被覆することによって霜の形成を100%抑制することに成功した。「酸化グラフェンは、水蒸気を集めて水分子を構造内に閉じ込め、水蒸気が凍結するのを防止する」と研究チームは説明する。

超疎水性潤滑剤を利用した従来の最先端着霜凍結防止技術が、霜の形成を最大5時間、5~36%抑制するのに対して、開発された表面は160時間100%抑制する。さらに、切り掻きや割れ、汚れに対する耐久性が高いとともに、容易に大面積へ拡大でき、3Dプリンティングによる製作も可能だ。「着霜防止ニーズは非常に多様なため、万能な手法ではないが、新しい知見を活用することによって、屋内外設備の損傷やエネルギー効率低下、重要な作業におけるリスクを防止し、年間維持コストを低減できるようになる」と、研究チームは期待している。

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