- 2024-12-6
- 化学・素材系, 技術ニュース
- Pb3Fe2O5F2, Science Tokyo, 東京科学大学, 東京科学大学理学院化学系, 研究, 複合アニオン化合物, 酸フッ化物, 酸素生成活性, 酸素生成電極触媒, 電極触媒
東京科学大学(Science Tokyo)理学院化学系の前田和彦教授らの研究グループは2024年12月5日、酸フッ化物Pb3Fe2O5F2が、同じ元素で構成され結晶構造の異なるPbFeO2Fよりも非常に高い酸素生成活性を持つことを発表した。
酸素生成反応のための電極触媒の開発では、これまで貴金属や希少金属を組み込み、活性の向上を図ってきた。しかし、資源制約やコスト面の問題から、鉄(Fe)のような普遍元素のみで構成される電極触媒で高い活性を得る新たな戦略が求められていた。
研究グループは、酸素生成電極触媒として、通常型ペロブスカイトPbFeO2Fと層状ペロブスカイト構造のPb3Fe2O5F2を調査した。その結果、Pb3Fe2O5F2が高い酸素生成活性を有し、Pb3Fe2O5F2の特定の結晶面が露出した条件で最も高い活性が得られることがわかった。さらに、高い酸素生成触媒活性に、Pb3Fe2O5F2の特異な層状構造と、層間に局在するフッ化物イオンの高い電子求引性が寄与していることを明らかにした。
従来の酸化物系の電極触媒では、酸素生成の良好な反応場に酸化物の特定の結晶面がなることが知られていたが、この研究により、酸フッ化物のような複合アニオン化合物を用いた電極触媒に関して、結晶面の依存効果が初めて明らかになった。
酸フッ化物を電極触媒として利用した研究はこれまでにも存在したが、詳細にフッ素の寄与を検討した例はなかったため、今回の研究成果は、フッ素の複合化による電極触媒の活性向上の指針を与える貴重な結果といえる。また、実験と理論の融合により、新しい材料群である複合アニオン触媒に関する有用な知見を得た点でも重要な成果となる。
研究では、希少金属を使わず、資源制約の小さいpブロックのフッ素を複合させることで、普遍金属元素(鉛と鉄)からなる電極触媒の酸素生成活性を向上させる新たなアプローチを提案した。陰イオンの複合化による電極触媒の活性向上は、資源の制約がない電極触媒の実現につながり、工業的有用性も有する。
今後、さらなる層状酸フッ化物の探索と触媒開発によって、貴金属や希少金属を利用せずに、既存の材料を超える高活性を持つ酸素生成電極触媒の開発が期待される。