- 2025-1-10
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- 2次電池, Waste Disposal & Sustainable Energy, エネルギー危機, エネルギー貯蔵ソリューション, スーパーキャパシター, ヘテロ原子ドーピング, メラミン, リノール酸, 上海理工大学, 再生可能エネルギー, 同済大学, 学術, 廃油, 水酸化カリウム, 水酸化カリウム活性化, 炭化, 窒素ドープ階層多孔性炭素(HPC), 電気自動車
世界的にエネルギー危機が深刻化するなか、高性能なエネルギー貯蔵ソリューションの必要性が高まっている。スーパーキャパシターは、従来の2次電池と比較して充電/放電速度が速く、サイクル寿命が長いことから、将来のエネルギーシステムにおいて重要視されている。
高まる需要に応えるためには、伝導性と表面積の拡大を両立する高品質な電極材料が必要となるが、従来の材料は十分とはいえない。この課題を解決するために、ヘテロ原子ドーピングと呼ばれる、複雑な多孔質構造と戦略的に配置された窒素原子を持つ炭素材料の研究が進められている。
上海理工大学と同済大学の研究チームは、廃油から「窒素ドープ階層多孔性炭素(HPC)」を製造する革新的な手法を開発した。研究の詳細は『Waste Disposal & Sustainable Energy』に、2024年10月18日付で公開されている。
開発した技術は、高温での自己加圧による炭化と水酸化カリウム活性化を利用したもので、従来のHPCよりも表面積、多孔性、エネルギー貯蔵能において大幅な改善を示した。
研究チームは炭素源として廃油に含まれるリノール酸を用い、窒素源としてメラミンを利用した。リノール酸液とメラミン固体の混合物を600℃に加熱し、炭化後に水酸化カリウムで処理することで、最大3474.1m2/gという非常に大きな表面積を持つHPCを生成した。貯蔵容量とイオン輸送効率を高めるために必要なメソ細孔の容積は、全細孔容積の72.9~77.3%を占めている。メラミンによる窒素ドープにより導電性は向上し、炭素骨格内に活性部位が導入され、電気化学反応性が向上した。その結果、重量比容量は430.2 F/gを達成し、2000回の充放電サイクル後も86.5%の保持率を維持した。
研究チームは、「廃油を前駆体として使用することで廃棄物を価値ある資源として再利用するだけでなく、優れた電気化学的特性を持つスーパーキャパシター材料を作り出すことができます」と述べている。
この技術の潜在的な用途は、循環型経済におけるエネルギー技術の可能性を広げるものだ。電気自動車、再生可能エネルギー貯蔵、その他の先進的な用途への応用に適しており、より環境に優しく効率的なエネルギーシステムの実現につながる可能性がある。