- 2025-1-4
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- Nature Energy, クリックケミストリー, ニューラルネットワーク, パワーエレクトロニクス, フィルムコンデンサ, ポリマーフィルム, ローレンス・バークレー国立研究所, 再生可能エネルギー技術, 印加電界, 学術, 導電性金属シート, 機械学習モデル, 電気自動車, 高効率材料
米ローレンス・バークレー国立研究所らの共同研究チームが、機械学習モデルを使用し、電気自動車や再生可能エネルギー技術に欠かせない、フィルムコンデンサ用の高効率材料を発見した。同研究成果は2024年12月5日『Nature Energy』誌に掲載された。
電気自動車やパワーエレクトロニクス、航空宇宙、再生可能エネルギーシステムなど、高温/高出力用途で使用されるフィルムコンデンサに対する需要が急速に高まっている。フィルムコンデンサは、ポリマーフィルムの誘電体を2枚の導電性金属シートで挟んだ構造をしており、印加電界を利用して高速で電力を充放電する。
従来、高電界条件下でも耐久性のある、軽量で柔軟性なポリマー材料がフィルムコンデンサの誘電体材料として使用されている。しかし、現在のポリマーは高温下で絶縁特性が低下するため、電力システムに使用するデバイス材料としては限界がある。そのため、高温高電界に耐えるフィルムコンデンサ用の耐熱性誘電ポリマーの開発が必要となる。
高性能ポリマーの開発には従来、1度に数種類の候補を合成して特性を調べるという試行錯誤が繰り返されていた。しかし、より優れたコンデンサを開発するためには、何十万もの可能性の中から有望な分子を見つけ出す必要があり、このような探索方法では時間がかかりすぎる。
材料開発を加速するため、研究チームは、ニューラルネットワークと呼ばれる機械学習モデルを利用し、高温と高電界への耐久性や高エネルギー貯蔵密度、合成の容易さなどを踏まえ、約5万種から有望なポリマーを3つに選定した。
そして、研究チームは、クリックケミストリーとして知られる技術を使用し、3つの候補ポリマーを合成した。共同研究チームに属するスクリプス研究所のBarry Sharpless教授は、クリックケミストリーに関する研究で2022年にノーベル化学賞を受賞している。
候補ポリマーで作製したフィルムコンデンサは、耐熱性と絶縁性、エネルギー密度において記録的な高さを示し、200℃で90%以上の効率という超高放電エネルギー密度を達成した。優れたサイクル安定性は、厳しい電界条件下での需要に応えるという。
関連情報
A Film Capacitor That Can Take the Heat – Berkeley Lab News Center