- 2025-3-21
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英サリー大学の研究チームは、ある種の量子系から理論的には正反対方向に進む2本の「時間の矢」が出現する証拠を発見した。時間は一方向にしか進まないということを私たちは経験的に知っているが、実は逆方向も同様に可能であることに気づいていないだけだということが示唆された。この研究は2025年1月29日付で『Scientific Reports』誌に掲載された。
時間の矢とは「時間は過去から未来へと不可逆的に流れる」という考え方だ。科学者たちは何世紀にもわたり、時間の矢について頭を悩ませてきた。例えば、こぼれたミルクがテーブルの上に広がっていくような過程を見ると、時間が前に進んでいることは明らかだ。この過程を映画のように逆再生したら、何かがおかしいとすぐに分かる。しかし、物理学の基礎となる法則は本質的に一方向性を支持しているわけではない。時間が前に進もうと、後ろに進もうと方程式は変わらないのだ。
今回の研究では、開放量子系として知られる量子系が外界環境とどのように相互作用するかを探った。開放量子系とはマクロな外界と相互作用するミクロな量子系のことだ。研究チームは、われわれがなぜ時間を一方向に進むものとして認識するのか、そして、この認識は開放量子力学から生じるものなのかを調べた。
まず、問題を単純化するために重要な前提を2つ設定した。第一に、対象の量子系自体にのみ集中できるような方法で、その量子系を取り巻く広大な環境を扱った。第二に、この環境は宇宙全体のように非常に大きいため、エネルギーと情報は環境中に散逸して二度と戻らないと仮定した。
このアプローチによって、ミクロのレベルでは理論上、時間は両方向に進む可能性があるにもかかわらず、どのようにして時間が一方通行の現象として現れるのかを調べることができた。
驚くべきことに、開放量子系を記述する方程式に標準的な単純化仮定を設定した後でも、系が時間的に前へ進もうと後ろへ進もうと方程式は同じように振る舞った。慎重に計算を進めていったところ、方程式の重要な部分である「メモリーカーネル」が時間の偶関数であり対称となるため、このような振る舞いになることが分かった。
この発見は、開放量子系でも時間反転対称性が成り立つという考えに数学的根拠を与えるものであり、時間の矢が確定的なものではない可能性を示唆している。
さらに、通常は見過ごされがちな、小さいが重要な点を研究チームは発見した。それは、時間対称性の特性を維持している時間不連続因子が出現したことだ。このような数学的メカニズムを物理方程式で見るのは珍しく、これほど自然に現れたことに驚かされたという。
今回の研究は、物理学における最大の謎の1つに新たな視点を提供した。時間の本質を理解することは、量子力学や宇宙論だけでなく、他の分野にも多大な影響を与える可能性がある。
