- 2025-3-21
- 技術ニュース, 電気・電子系
- NIMS, 人工傾斜積層体, 名古屋大学, 東京大学, 横型モジュール, 横型熱電発電, 熱電モジュール, 熱電永久磁石, 物質・材料研究機構, 研究, 磁性材料

NIMS(物質・材料研究機構)は2025年3月18日、東京大学、名古屋大学と共同で、横型熱電変換性能の極めて高い新材料「熱電永久磁石」を開発し、印加温度勾配あたりの値に換算して世界最高電力密度の横型熱電発電に成功したと発表した。熱電モジュールにおいて室温付近で電力密度56.7mW/平方cmの横型熱電発電を達成している。
従来の熱電モジュールは、ゼーベック効果と呼ばれる熱流と同じ向きに電流が発生する縦型熱電効果が採用されている。縦型熱電材料は材料性能指数zTが高いが、原理的にモジュール構造が複雑化する課題があった。そこで近年は、大幅にモジュール構造を簡略化できる横型熱電効果が注目を集めているものの、縦型熱電材料に比べzTが非常に低い問題があった。
研究グループは、サマリウム・コバルト(SmCo5)磁石とビスマス・アンチモン・テルル(Bi0.2Sb1.8Te3)化合物を交互に積層して焼結接合し、斜めに切断した人工傾斜積層体「熱電永久磁石」を開発した。この傾斜積層構造の最適設計、接合界面の電気/熱抵抗率を最小化し、これまで報告されてきた磁性材料よりも2桁高いzT(室温にてzT=0.2)が得られた。
接合界面における電気/熱抵抗率を見える化したところ、これらが複合材料全体に対して1%程度の影響しか及ぼさないことがわかった。
さらに、開発した熱電永久磁石から構成される熱電モジュールの発電試験を実施。電力密度が温度差152℃で56.7mW/平方cmを達成した。印加温度勾配あたりの値に換算すると横型モジュールとして世界最高値であることに加え、市販の縦型モジュールに匹敵する性能であることがわかった。開発した熱電モジュールは、極めて高い電力を小さい温度勾配からも得られることになる。

縦型、横型熱電モジュールに印加した温度勾配に対して得られた電力密度の比較
今回の成果は、磁石が使用されるあらゆる環境下で利用できる熱エネルギーハーベスティングマネジメント技術につながることが期待される。今後は、さらに高性能な熱電永久磁石材料、熱電発電/電子冷却デバイスの開発を目指す。また、さらなる大判化で世界初のワットオーダー横型熱電発電を目指す。