豪ニューサウスウェールズ大学、超薄膜MOF触媒による安価な水素製造法を開発

豪ニューサウスウェールズ大学(UNSW)の研究チームは、水の電気分解による水素製造装置のコストを低減できる超薄膜触媒を発明した。

次世代のクリーンエネルギーとして注目される水素だが、水の電気分解による工業生産には、プラチナやルテニウム、イリジウムなどの高価な金属を使った高効率の触媒が必要で、製造コストが高いという課題がある。UNSWの研究チームは、ニッケル、鉄、銅など安価な金属を使う金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)を使う触媒の製造に成功した。この研究成果は『Nature Communications』誌に6月5日付けで掲載された。

UNSWでこの研究チームをリードするChuan Zhao准教授によると、水の電気分解には通常2種類の異なる触媒が必要だが、この触媒は1つですべての反応を促進することができるという。MOFでコーティングした多孔質電極をナノサイズの厚さにスライスしたこの触媒が示した導電性と水の分解効率のデータは、予想を大きく超えるものだった。

通常MOFはバルクパウダー(固体粉末)として製造されるが、バルクの特性としては導電性が悪いため、水の電気分解のような電気化学反応用途には不向きと考えられていた。加えて、触媒反応を起こす部位が細孔の奥にあるため、水分子が触媒に接触しにくいという問題があった。

Zhao准教授らの研究チームは、MOF触媒をコーティングした電極をナノメートルの厚さにスライスして細孔を露出させ、ナノシートアレイとすることで、導電性と触媒への接触という大きな課題を解決した。

「これは画期的な発見だ。この触媒によりMOFが高い導電性を示しうることを証明できた」とZhao准教授。「MOFは、燃料貯蔵、薬剤投与、カーボン吸着など様々な用途への可能性を秘めていると言われている。今回の発見でMOFに高い導電性を持たせられることがわかり、これら安価な材料を電気的な触媒だけでなく幅広い用途にも応用できることを示している」と、その研究成果を説明する。

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