着るだけで体温や心拍を測定――洗濯機で洗えるスマート衣類「E-TeCS」

Image: Courtesy of the researchers

MIT Media Labの研究者らが、体温や心拍数、呼吸数といったバイタルサインの測定と送信ができる衣類「E-TeCS(Electronic Textile Conformable Suit)」を開発した。伸縮性の高い生地に柔軟で細長いセンサーを織り込むことで、快適な着心地を確保している。量産性も高く、洗濯機で繰り返し洗うこともできるので、普段着にもなるという。研究結果は、2020年4月23日付けの『npg Flexible Electronics』に掲載されている。

バイタルサインを測定するウェアラブルデバイスは、これまでもパッチ型、衣料型などが開発されている。パッチ型には、皮膚のように薄く柔軟性を持つものもあるが、皮膚へ貼り付ける必要があったり、壊れやすかったりと扱いにくい面もある。衣料型も、現状では測定できる範囲が限られたり、1種類しか測定できなかったりと用途が限定されている。

研究チームは、広範囲の体の動き、体温、心拍数、呼吸数を計測しつつ、機能性や耐久性にもこだわった衣料型ウェアラブルシステム「E-TeCS」を開発した。外から見ると普通のTシャツに見えるが、内側を見るとセンサーがあるのが分かるという。

センサーは、柔軟なリボンのように薄くて細長く、布地に設けた細いポケットに織り込まれている。このポケットには、小さな開口があり、センサーが皮膚に触れるようになっている。布地には吸汗速乾性が高く、肌になじみやすいことから、スポーツウェアにも使われるポリエステル混紡生地を採用した。

試作では、30個の温度センサーと1個の加速度センサーを服に織り込み、エクササイズ中の人の動き、心拍数、呼吸数を測定した。服には取り外し可能なBluetoothモジュールを付け、測定データをスマートフォンに送信する。センサーは上半身を広くカバーしているので、さまざまな箇所の温度変化と、それらデータの相関関係を調べることができた。

服にセンサーを付けたまま、洗濯機で洗えるというのも重要なポイントだ。また、センサーを外して他の衣類に付け替えることもできる。温度センサーや加速度センサーは市販品を利用し、量産化の検討も実施済みだ。年齢や体形に合わせたサイズ展開も簡単で、ズボンなどほかの衣類も開発する予定。さらに、血中酸素濃度モニターなども組み込もうとしている。

E-TeCSのようなウェアラブルデバイスを利用すれば、医師は病院や自宅で療養中の患者、アスリート、さらには宇宙飛行士の健康状態を離れた場所からモニターできるようになる。「こうしたデータ収集を通して、医師はより良い診断、より良い方法で患者を救えるだろう」と、研究チームは考えている。

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