磁力を加えると集団で上に向かって流れる粒子を発見

James Gilchrist/YouTube

米リーハイ大学の研究チームが、磁力を加えると砂が重力に逆らい上に向かって流れることを発見した。粒子に回転磁場を加えると、粒子が上に向かって坂を流れ、壁を登り、階段を上り下りする様子を動画で公開している。

同研究成果は2023年9月20日、「Nature Communications」に掲載された。

研究チームの1人が、マイクロカプセル化に関する研究で、今回の異常な現象を偶然に発見した。マイクロローラーと呼ばれる、酸化鉄でコーティングしたポリマー粒子を入れた薬瓶の下で磁石を回転させると、粒子が上へ向かって積み上がり始めたのだ。

そこで、研究チームは、異なる条件下で材料が磁石に対してどのように反応するかを研究し始めた。まず、磁石に反応させずに注がれたマイクロローラーは、下に向かって流れた。しかし、磁石を使って回転力を加えると、個々の粒子が回転し始め、一時的に粒子対を形成/崩壊し、上に向かって流れた。

研究チームは、粒子が上に向かって動く原因となる力は何かを調べた。堆積した粒体の斜面の角度が負なら、摩擦係数が負になるような凝集力がなければならない。粒状物質の流れを記述する方程式で計算した結果、実際に、摩擦係数が負になることが分かった。

磁力に応じて凝集力は増し、結果、粒子はより速く動くように引っ張られる。粒子の集団運動と粒子同士の引力によって、砂粒の山は、重力に反して壁や階段を上ることができる。レーザーカッターを使って、片側に上りの階段、もう一方に、下りの階段を作ったところ、階段を上り下りするマイクロローラーが観測された。1粒のマイクロローラーでは、階段の段差を乗り越えることはできないが、協力することで可能になるのだ。

今回の発見は、マイクロロボティクスやヘルスケア、材料輸送、農業といった幅広い応用につながりうるという。研究チームは、現在、粒子の集団運動をよりよく理解するために、回転速度や磁力の大きさを変えて実験しており、今後、応用についても検討するとしている。

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