総トラフィック量をAIで予測し、OSSベースの仮想PONで自律的な波長資源の増減切り替えに成功 OKI、東北大

沖電気工業(OKI)と東北大学は2023年12月7日、光インターネットサービスで採用されるパッシブ光ネットワーク(PON)システムを効率よく運用することを目的に、人工知能(AI)で必要な通信量を予測して効率よく資源を割り当てる、「仮想化資源制御技術」を発表した。世界で初めて、AIで総トラフィック量を予測して、オープンソースソフトウエア(OSS)ベースの仮想PONで自律的な波長資源の増減切り替え実験に成功した。

第5世代移動通信システム(5G)では、第4世代移動通信システム(4G)から高速大容量化したサービスが展開されているが、2025年ごろには、機能が強化されたポスト5Gのサービスの開始が見込まれている。しかし、ポスト5Gや第6世代移動通信システム(6G)では、基地局に設置が必要なアンテナ(セル)数の増大が予想される。

そこで、OKI、東北大学は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が委託する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の一環として、OSSをベースとした仮想PONシステムの構築や資源の割り当て、AIによる最適資源予測技術の開発などに取り組んできた。

OKIは今回、PONシステムに適応して駆動する資源制御技術の開発として、XGS-PONをベースに異なる2波長(10Gbps×2)を使用した仮想PONシステムの構築、ネットワーク機器オープン化の業界団体ONFで規定される、アクセス向けOSSのONOS/VOLTHAに波長/時間の帯域資源によるスライスを割り当てる機能の構築(スライスごとに低遅延、最大帯域などの通信要件の確保)を担当した。

東北大学は、トラフィックのAI予測技術の開発として、時系列データの予測によく用いるロング・ショートターム・メモリー(LSTM)を使った学習と、複数エリアの演算によるメモリー使用率の低減に向けた予測、実装を担当した。

開発した技術は、送受信する波長をONUが切り替え、OLTへの収容を変更でき、通信量は1波長あたり10Gbpsをまかなえる。2波長(20Gbps)を実装し、総トラフィックのしきい値(境目となる値)を8Gbpsとした実証実験では、AI予測の結果がしきい値以下のときはすべてのONUを1波長(1台のOS)で収容、しきい値以上の時は2波長(2台のOSU)でONUを収容できるように波長資源を制御し、資源の割り当てを変更できた。AIで総トラフィック量を予測し、OSSベースの仮想PONで制御する自律的な波長資源の増減切り替えの実証は世界初となる。

この技術は、PONスライス制御技術により、膨大なアンテナと基地局をつなぐ光通信ケーブルを効率的に運用するもので、不定期に人が集中するエリアや、時間帯で人が集中するエリアに適用すると効果を発揮する。

PONスライス制御技術の概要図

開発した技術の効果を消費電力に置き換えた場合、既存方式と比べて20%以上の削減が期待できる。また、既存のPONで使用される通信局側のOLTの消費電力は、ポートあたり年間約8.8kWhとされているが、この技術の活用で年間約1.8kWh以上の削減が期待できる。

ポスト5Gのサービスが社会実装される2025年ごろには、全国で現在の約100倍にあたる数千万台のOLTの設置が予想されているが、開発した技術を活用することで、年間で消費電力を約2GWh削減(CO2 換算で約920t削減)することが期待できる。PONシステムの加入者側装置(ONU)やアンテナ側のスリープ制御も含めた場合、消費電力のさらなる削減が見込める。

今後、OKIは仮想PONの実用化を目指し、商品開発に取り組む。東北大学はAI予測技術の精度向上と、予測結果に応じたネットワーク資源割り当て技術に関する研究開発を進めていく。

関連情報

世界初、OSSベースの仮想PONで自律的な波長資源の切り替え技術を実証 | ニュース | NEDO

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