- 2024-4-2
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同じ電荷を帯びた粒子は互いに反発するだけでなく、引きつけ合うことがあると実験で判明した。この研究は英オックスフォード大学によるもので、2024年3月1日付で『Nature Nanotechnology』に掲載された。
「異なる電荷は引きつけ合い、同じ電荷は反発し合う」ということは、物理学における電磁気の基本原理であり、長年にわたり信じられてきた。
それに対し、今回の研究は、溶液中の同じ電荷を帯びた粒子が、長距離間で互いに引きつけ合うことを示した。研究チームが明視野顕微鏡を用いて、水中に浮遊する負電荷を帯びたシリカ微粒子を追跡したところ、微粒子同士が引きつけ合い、六角形のクラスターを形成していることを発見した。ところが、正電荷を帯びたアミノ化シリカ微粒子は、水中でクラスターを形成しなかった。
研究チームは、界面での溶媒の構造を考慮した粒子間相互作用の理論を用いて、水中で負電荷を帯びた粒子には、大きく離れた距離で静電反発を上回る引力が存在し、クラスター形成の原因となることを立証した。一方、水中の正電荷を帯びた粒子では、溶媒によるこの相互作用は常に反発し、クラスターを形成しない。
この結果はpHに依存することが分かり、pHを変化させることで、負電荷を帯びた粒子がクラスターを形成するようにしたり、あるいはクラスターを形成しないように制御することができた。一方、正電荷を帯びた粒子同士は、pHに関係なくクラスターを形成しなかった。
そこで、水とは界面挙動が異なるエタノールなどのアルコールに溶媒を変えたところ、正電荷を帯びたアミノ化シリカ粒子は六角形のクラスターを形成したが、その一方で、負電荷を帯びたシリカ粒子はクラスターを形成しなかった。
これらの発見は、同じ符号の電荷間で働く力は電荷間の距離とは関係なく常に反発するという、古典電磁気学の中心原理とは矛盾しているように見える。長年の常識を覆すことになるこの結果は、われわれの理解を根本から見直す契機となるものだ。
また、この研究は自己組織化、結晶化、相分離など、さまざまな長さスケールの粒子間および分子間相互作用を伴うプロセスに、直接影響を与えると考えられる。医薬品やファインケミカル製品の安定性、ヒト疾患における分子凝集に関連した病理学的機能不全など、さまざまなプロセスについての考え方にも影響を与えるだろう。さらに、溶媒に起因する界面電位の符号や大きさなど、従来は測定不可能と考えられていた特性を綿密に調べることも可能になると期待される。