- 2024-4-8
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- Nature Nanotechnology, Shizhang Qiao, アデレード大学, コバルト-亜鉛(CoZn)クラスター, ナノコンポジット電極触媒, フル充放電サイクル, ポリスルフィド(多硫化物)濃度, リチウム硫黄電池, 学術, 炭素材料, 硫黄還元反応, 遷移金属電極触媒
豪アデレード大学は2024年3月14日、次世代のリチウム硫黄電池は、5分未満でフル充電できる可能性があるとする研究を発表した。この研究は、同大学を中心とした研究チームによるもので、2024年2月16日付で『Nature Nanotechnology』に掲載された。
リチウム硫黄電池はエネルギー密度が高く、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車などさまざまな機器で使用されているが、充放電速度が遅いという問題を抱えており、一般的に1回のフル充放電サイクルでおおむね1~10時間を要する。今回の研究は、この問題に取り組む初の包括的アプローチであり、電極触媒材料を設計する科学者やリチウム硫黄電池の反応メカニズムを研究する専門家に大きな影響を与えるものだという。
研究チームは、リチウム硫黄電池の充放電速度を制御する極めて重要なプロセスである硫黄還元反応に注目し、硫黄還元反応が進行している間の鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛を含む多様な炭素ベースの遷移金属電極触媒について調べた。
シンクロトロン放射光によるX線吸収分光法での測定と分子軌道計算により、遷移金属系触媒における軌道占有率がポリスルフィド(多硫化物)濃度を決定する際の役割が明らかになり、それによって硫黄還元反応の動力学的予測ができる。ポリスルフィドは硫黄還元反応中の反応中間体として機能するため、ポリスルフィド濃度が高いほど反応速度が速くなることが分かった。
この動力学的傾向を利用して、研究チームは炭素材料とコバルト-亜鉛(CoZn)クラスターから成るナノコンポジット電極触媒を設計した。この電極触媒を硫黄系正極に使用した場合、リチウム硫黄コイン電池は8℃と25℃で1000サイクル充放電でき、約75%の放電容量維持率を示した。
研究チームを率いたアデレード大学のShizhang Qiao教授は、この研究成果について、5分未満でリチウム硫黄電池をフル充放電することが実現可能になるという著しい進歩を明らかにしたとしている。