機体を燃料として再利用する、自食式ロケットエンジンの開発

Krzysztof Bzdyk/YouTube

英グラスゴー大学の研究チームが、燃料として機体の一部を消費する、自食式ロケットの製造/発射に成功した。「Ouroboros-3」と命名したロケットエンジンは、燃焼による廃熱を利用し、プラスチック製の機体を順次溶解させていく。溶けたプラスチックは、エンジンの追加燃料となり、通常の液体推進剤と共に燃焼する。

自食式エンジンを積んだロケットは、搭載する推進剤を削減できるため、積載物を多くできる。また、機体が消費されるため、多段式ロケットで生じるようなスペースデブリと呼ばれる宇宙ゴミを減らせる。従来のロケットの構造体は全質量の5~12%を占めるが、自食式ロケットは空間と燃料を節約し、より多くの物資を宇宙に届け、小型衛星も宇宙に直接運べるようになる。

自食式エンジンの概念自体は1938年に提案され、特許も取得されていたが、制御した方法で発射できる自食式エンジンの設計には至らなかった。2018年にグラスゴー大学とウクライナのドニプロ国立大学の研究チームが、制御可能な自食式エンジンの概念実証に成功した。

今回、英キングストン大学の支援を受け、グラスゴー大学の研究チームは、より高いエネルギーの液体推進剤を使用しても、プラスチック製の機体が推進力に耐えられることを実証した。研究チームの設計は2024年1月、フロリダ州で開催されたアメリカ航空宇宙学会の論文として紹介され、Ouroboros-3が100ニュートンの推進力を生み出したと報告されている。

Ouroboros-3は、高密度のポリエチレン・プラスチック製チューブを燃料源として自食し、ロケットの主推進剤である気体酸素と液体プロパンの混合物を共に燃焼させる。試験中、推進剤の5分の1を機体から補給し、自食過程により安定して燃焼した。また、燃料の調整と再始動、パルス信号のオン/オフなど、ロケットの燃焼が制御できることが実証され、自食ロケット発射から軌道への上昇の制御につながると期待される。

グラスゴー大学のPatrick Harkness教授は、「今回の実験成果は、完全に機能する自食式ロケットエンジン開発の基礎となります。将来のロケットの幅広い用途と宇宙産業の発展に役立つでしょう」と説明した。現在、研究チームは自食式エンジンの改良と試作機での試験を検討している。

関連情報

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る