「恐らく宇宙で最も強力な磁場」発生の痕跡を発見――ブルックヘブン国立研究所

CREDIT: TIFFANY BOWMAN AND JEN ABRAMOWITZ/BROOKHAVEN NATIONAL LABORATORY

アメリカ・エネルギー省のブルックヘブン国立研究所は2024年2月23日、重イオン加速器(RHIC)を用いた実験により、金などの重い原子核が衝突すると、極めて強力な磁場が発生することを直接的に証明する痕跡を発見したと明らかにした。

従来、金のような重い原子核の偏心衝突が起きると、衝突の際に正の電荷を帯びた陽子が光速に近い速度で渦を巻き、1018(エクサ)ガウスという非常に強力な磁場を発生すると予測されていた。地球の地磁気は0.5ガウス、冷蔵庫に貼り付けるマグネットが100ガウス、宇宙で最も密度が高いとされる中性子星が1014ガウスほどであることを考えると、ケタ違いに大きい。カリフォルニア大学ロサンゼルス校から研究チームに参加したGang Wang氏は「恐らく宇宙で最も強力な磁場」だと言う。

しかし、その磁場は10-23秒未満という極めて短い時間で消滅してしまう。磁場の存在を直接証明することが困難であることから、研究チームは磁場そのものを直接測定するのではなく、荷電粒子の動きを調べた。磁場が発生すると、荷電粒子の動きに影響し、電磁場が誘発されるからだ。

高度な検出器を用いて荷電粒子のペアの運動を追跡した結果、クォーク・グルーオンプラズマ(QGP)の電磁場によってのみ引き起こされる偏向パターンが確認された。200GeVという高いエネルギーをかけた金-金の原子核による衝突だけでなく、ルテニウム-ルテニウムやジルコニウム-ジルコニウムのような小さな原子核の衝突でも信号があった。また、27GeVという比較的低いエネルギーでの金-金の衝突ではさらに強い信号が観測された。低エネルギーの衝突では電磁誘導がゆっくり起きるため、偏心衝突によって生じた磁場により、粒子を偏向させる電磁場が誘発される証拠をさらに補強する結果と言える。

QGPの電磁誘導によって粒子がどれだけ偏向するかは、磁場の強さとQGP内の電気伝導性に直接関連する。従って今回の発見は、QGPの電気伝導性を研究する新たな手法となり得る。QGPの基本的な電磁気特性は、クォークとグルーオンが合体してハドロンと呼ばれる複合粒子を形成する条件を決定する役割を担っているという。

本研究の詳細は、「Physical Review X」誌に掲載されている。

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