- 2024-6-11
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スウェーデンのリンショーピング大学は2024年5月14日、同大学を中心とする研究チームが、ポリアクリル酸カリウムを含んだ電解液を使用し、8000サイクル以上使用しても80%の性能を維持できる亜鉛・リグニン電池を開発したと発表した。同研究成果は2024年5月7日、「Energy & Environmental Materials」誌に掲載された。
亜鉛・リグニン電池は、亜鉛負極とリグニン正極に、亜鉛イオンを含んだ電解液を使用した二次電池だ。リグニン正極は、リグニンと導電性カーボンナノ粒子を混合した複合体で、充放電の際、正負極でそれぞれリグニンと亜鉛の酸化還元反応が起こり、電池として機能する。
製紙産業からの廃棄物であるリグニンと豊富な金属である亜鉛は、どちらもリサイクル可能で安価である。亜鉛は使い捨て電池として広く使用されているが、電解液と反応して水素ガスを発生し、樹枝状成長するため、二次電池としては耐久性に課題があった。
研究チームは、亜鉛・リグニン電池にポリアクリル酸カリウムを含んだ電解液を使用し、アクリル酸が亜鉛電極表面のイオン流動を安定にすると明らかにした。その結果、亜鉛の樹枝状成長が抑制され、電池の耐久性が向上するという。
開発した亜鉛・リグニン電池は、8000サイクル後に初期容量の80%を維持し、1kg当たりの最大エネルギー出力は23Wh、ピーク出力は610Wと鉛蓄電池並みの性能を示した。
リンショーピング大学のZiyauddin Khan博士は、「亜鉛もリグニンも非常に安価で、簡単にリサイクルできます。使用サイクルあたりのコストを計算すると、リチウムイオン電池と比べても非常に安価な電池になります」と説明した。
経済的利点により、亜鉛・リグニン電池は、持続可能な大規模蓄電池という新興市場において魅力的な選択肢となりうる。開発した電池は小型であるが、研究チームは自動車用バッテリーサイズの大型バッテリーの作製も可能だとしている。