九州大学は2019年12月16日、名古屋大学と共同で、1滴の水滴から5V以上の発電ができる技術を開発したと発表した。
IoTの適用範囲が広がるに従って、さまざまな環境下でセンサーを駆動するための技術として、環境に存在する熱や振動などを電力に変える環境発電(エネルギーハーベスティング)技術が従来から研究されている。また、水力は代表的なクリーンエネルギーの1つだが、その活用は大規模な水力発電などほとんどで、工場配管などの小規模または微小流体デバイスなどにおける小さな流れはこれまで活用が進まなかった。
今回開発した発電技術は、半導体の原子層材料である二硫化モリブデンを、1原子レベルの薄さの状態でプラスチックフィルム上に成膜。その両端に電極を形成して45°に傾けて水滴を落とし、二硫化モリブデンの表面を滑らすことで電圧を発生させるものだ。1滴落とすとパルス状の5Vから8Vの電圧が発生する。
従来グラフェンを用いた同様の発電現象が確認されていたが、数十mVから数百mVの電圧に留まっていた。今回の研究では、二硫化モリブデンが発電装置内で還流する電流を抑制することで、高電圧化できた。さらに3つの発電装置を直列に接続して、3滴の水滴を同時に滴下することで15ボルトの発電にも成功した。
今回開発した発電技術は、流体が存在するさまざまな環境での、自己給電型のIoTデバイス電源としての活用が想定される。また、柔軟性も有しており、配管の内側などさまざまな場所にも設置可能だ。雨滴から自己発電する雨量計や工場排水で発電する水質センサーなどのIoTデバイスへの応用が考えられるという。