卵の殻を使ってレアアース元素を回収するサステナブルな手法を開発

ダブリン大学トリニティ・カレッジとアイルランド科学財団の共同研究チームは、卵の殻を水溶液中のレアアース回収に利用できることを発見した。環境に優しい新たなレアアース抽出法で、研究成果は『ACS Omega』誌に2024年6月4日付で公開されている。

レアアースは、電気自動車や風力タービンなどに用いられる技術に不可欠なため、需要が高まっている。一方でその供給は十分とは言えず、環境からレアアースを抽出する新しい手法が求められている。今回研究チームは、卵の殻に含まれる方解石(カルサイト)が、レアアースを効果的に吸収し水から分離できることを発見した。方解石は、炭酸カルシウムが結晶化した鉱物だ。

レアアースを含む水溶液に卵の殻を入れ、25~205℃までのさまざまな温度で最長3カ月放置すると、レアアースは方解石と有機マトリックスの境界に沿って卵殻内に拡散した。そして、高温下では卵殻表面に新たな鉱物が形成した。90℃では、卵殻表面は弘三石(kozoite)と呼ばれるレアアース化合物の形成に役立った。より高温にすると、卵殻は完全に変質し方解石の殻が溶解して、多結晶の弘三石に置き換わった。さらに、最高温度の205℃では形成した鉱物は徐々にバストネサイトに変化した。バストネサイトは、安定したレアアース炭酸塩鉱物で、産業界では技術用途のレアアース抽出に使用されている。

今回開発した革新的な手法は、卵の殻という廃棄物を低コストで環境に優しい材料として再利用でき、増加するレアアース需要に対応できることを示唆している。

論文の筆頭著者であるRémi Rateau博士は、「この研究は、レアアース回収の問題に対する持続可能な解決策を提供するだけでなく、循環経済と廃棄物の価値化の原則にも合致する、廃棄物の革新的な利用法を示しています」と述べている。また、研究責任者のJuan Diego Rodriguez-Blanco教授は、「レアアース回収のための貴重な資源として卵殻廃棄物を利用することで、従来の抽出法に関連する重大な環境問題に対処し、より環境に優しい技術の開発に貢献します」と付け加えている。

関連情報

A cracking discovery – eggshell waste can recover rare earth elements needed for green energy – News & Events | Trinity College Dublin

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