- 2023-11-13
- 化学・素材系, 技術ニュース
- NIMS, セルロース微結晶, ヘアスタイル, ポリビニルアルコール, ポリマーコンポジット, 形状記憶, 整髪剤, 日本ロレアル, 物質・材料研究機構, 研究
物質・材料研究機構(NIMS)と日本ロレアルは2023年11月18日、湿度に応答して形状記憶効果を発動する、整髪剤向けの新材料を開発したと発表した。この新材料を使った整髪剤でヘアスタイルを整えれば、雨の日や発汗時といった湿度の高い環境でもヘアスタイルを保つことができる。
研究チームが開発したのは、湿度にさらされたときに形状記憶効果を発動する新たなポリマーコンポジット材料で、天然由来のセルロース微結晶(CM)の強固な「分子内・分子間水素結合」ネットワーク形成能と、ポリビニルアルコール(PVA)が持つ湿度に応答し発現する「形状記憶効果」を融合した。コンポジット中に存在するCMが水分子の侵入や吸着を阻害することでPVAの形状記憶効果を保ち、研究グループが100%相対湿度条件下で実験したところ、少なくとも6時間は形状を維持することがわかった。
さらに、このPVA/CMコンポジットをヘアワックスのように髪束にコートしたところ、80%相対湿度条件下でも髪束の広がりが顕著に抑えられたうえ、湿度にさらされると、むしろ形状回復が誘起され、最初にスタイリングした髪型に近づくことも確認された。また、PVA/CMコンポジットは、42℃の温水やシャンプーで簡単に洗い流すことができた。
従来の整髪剤は、髪の毛を湿気から保護して影響を軽減することで、ヘアスタイルを維持しており、雨や大量の汗には効果が薄かった。研究グループは「湿度によって引き起こされる形状記憶現象のメカニズムが明らかになったことで、今後、湿度に対してより効果の高いヘアスタイリングの方法を提案できる可能性がある」としている。
今回の研究成果は2023年11月1日、Advanced Materials Interfaces誌にオンライン掲載された。