3Dプリント後に自己組織化し、伸縮性と高導電性を両立する新素材を開発

Credit: Marzia Momin. All Rights Reserved.

アメリカ・ペンシルベニア州立大学は2024年6月26日、同大学の研究者らが高い導電性を持ち、伸縮可能かつ自己組織化する新素材を開発したと発表した。皮膚と接するひずみセンサーや筋電位センサーといったウェアラブルな医療機器を、3Dプリントによって容易に造形することができる。

研究チームによると、伸縮性を備えた導電体の開発は10年程前から進められているが、従来の製造方法で作成した素材は導電性が高くないといった欠点がある。液体金属ベースの導電体を使うことで導電性を高められるが、その場合は造形した素材に導電性を与えるため、二次的な加工を施して活性化する必要があった。具体的には延伸や圧縮、せん断摩擦、焼結、音波による加圧、レーザーでの活性化などが使われるが、いずれも複雑なプロセスであり、加工時に液体金属が漏れ出して電気回路が短絡し、デバイスの故障につながる危険性があった。

研究チームは、液体金属とPEDOT/PSSと呼ばれる導電性ポリマー、そして液体金属を粒状に変形させる親水性ポリウレタンの3つを組み合わせた新素材を作り出した。PEDOT/PSSは、導電性を備えた高分子材料で、200℃でも化学組成が壊れることがなく、製造プロセスにおける上流の加工から使用することができる。

この素材を3Dプリントして加熱すると、まず最下層にある液体金属粒子が自己組織化して導電経路を形成する。一方で上面の液体金属粒子は空気中の酸素によって酸化し、絶縁性をもつ最上層を形成する。導電層は筋電位や歪による電位をセンサーに伝え、絶縁層は信号の精度低下を防ぐのに役立つ。 研究チームが「非対称自己絶縁伸縮性導体(aSISC)インク」と呼ぶこの新素材は、導電性を与えるための二次的な活性化プロセスは不要で、自己組織化により高い伸縮性(800%以上)を維持しながら、高い導電性(2089 S/cm)を達成した。

このaSISCインクは3Dプリント可能であり、ウェアラブルデバイスの作製も容易だという。研究者たちは、障害者支援を目的とした技術分野において、応用の用途を模索している。

研究成果は、『Advanced Materials』誌2024年4月2日号に掲載された。

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