- 2024-9-9
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- SPICA, イオン, フッ化物イオン導電性固体電解質, 京都大学, 伝導メカニズム, 全固体フッ化物電池, 熱プラズマ法, 特殊環境中性子回折装置, 研究
京都大学は2024年9月6日、全固体フッ化物電池で使われるフッ化物イオン導電性固体電解質Ca0.48Ba0.52F2のイオン伝導メカニズムを、原子レベルで解明したと発表した。ポスト・リチウムイオン電池の最有力候補の一つであるフッ化物電池の材料開発につながることが期待される。
全固体フッ化物電池での利用が期待されている、蛍石型構造をもつフッ化カルシウム(CaF2)やフッ化バリウム(BaF2)は、イオン伝導率は低いもののCaF2とBaF2を原子レベルで混合すると、イオン伝導率が飛躍的に向上する。このことは経験的に知られていたが、CaF2–BaF2系のフッ化物イオン(F–)の分布や伝導メカニズムは不明だった。
このため、研究グループは熱プラズマ法で作製したCa0.48Ba0.52F2固体電解質を用いて、中性子回折実験を行った。中性子回折実験は特殊環境中性子回折装置SPICA(スピカ)を用いて行い、同系の原子配列や核密度分布など構造の解析を試みた。その結果、異なるイオン半径をもつCaとBaが混合したことで構造歪みを誘発し、それによってFの原子配列が局所的に乱れることがわかった。さらに、フッ化物イオン伝導経路の可視化にも成功し、Fの原子配列の乱れが伝導経路内のイオン流れ(イオン伝導率)の向上に大きく寄与していることを確認した。
今回の研究成果は同月5日に、国際学術誌「ACS Applied Energy Materials」にオンライン掲載された。
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