- 2018-11-8
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- Bi2Te3, YbSi2, YbSiGe, イッテルビウムシリコンゲルマニウム, イッテルビウムシリサイド, エネルギー・ハーベスティング, ビスマス・テルライド, 大阪大学, 微小環境発電, 排熱回生システム, 日立製作所, 熱電発電技術
大阪大学は2018年11月7日、日立製作所と共同で、室温から100℃付近までの低温域で高い熱電変換出力因子を示す新物質、イッテルビウムシリコンゲルマニウム(YbSiGe)を発見したと発表した。
熱電発電技術は、小型/軽量、高信頼性、メンテナンスフリーといった特徴から、これまでは主に惑星探査機に搭載される原子力電池の電源として利用されてきた。そして、近年では、高度情報化社会で用いられる膨大な数のセンサーや端末に供給する電力を生み出し、全1次エネルギーの約3分の2と言われる未利用熱エネルギーを回収する技術として期待されている。
既存の熱電材料では、ビスマス・テルライド(Bi2Te3)が室温付近で最も高い性能を示す。しかし、構成元素であるテルル(Te)の毒性と希少性や、ビスマス(Bi)の資源偏在性が問題となっていた。そのため、無毒で資源量が豊富な元素から構成される高効率熱電変換材料の開発が望まれていた。
研究グループは昨年、室温付近で高い熱電変換出力因子を示す物質としてイッテルビウムシリサイド(YbSi2)を開発した。そして今回、シリコン(Si)をゲルマニウム(Ge)で置換することで性能向上を図り、Siの半分をGeで置換したYbSiGeにおいて熱電変換出力因子の向上に成功した。
これにより、薄く広く大量に存在する低品位な熱エネルギーを電気エネルギーに変換して有効活用する熱電発電技術の実用化が期待できるという。具体的には、微小環境発電や、自動車の燃費向上のための排熱回生システム等への応用が考えられるとしている。