微生物が二酸化炭素などからタンパク質と葉酸を生成――約6gで1日分の葉酸摂取量に

独テュービンゲン大学などの研究チームが、微生物を利用して二酸化炭素、酸素、水素からタンパク質とビタミンB9(葉酸)を同時に生成する技術を開発した。生成物は、栄養価の高い代替タンパク質源として利用でき、増加する世界人口を養う解決策となる可能性がある。

農業による食料生産は、土地や水などの資源を大量に消費するため、環境に大きな負荷をかけている。世界の人口増加に伴い、多くの地域で食料不足が深刻化すると予想されており、持続可能な食料生産システムの構築が急務となっている。微生物を用いた二酸化炭素などを原料とする単細胞タンパク質(SCP)の生産は、持続可能な食料源として期待されているが、従来の生産方法では葉酸の生成が課題だった。

研究チームは、この課題を解決するため、2つの異なる微生物を連続して使用する2段階プロセスを開発した。第1段階では、サーモアナエロバクター属の「kivui」という細菌が、酸素のない環境で二酸化炭素と水素から酢酸と葉酸を効率的に生成する。第2段階では、第1段階で生成された酢酸を原料とし、パン酵母がタンパク質を生成して、同時に葉酸も生成する。

今回の研究では、従来の菌に代わり、kivuiを採用したことで、より効率的に葉酸を生成できるようになった。このプロセスで生成されるパン酵母を乾燥させて約6g摂取すれば、成人1日分の葉酸摂取量を満たすことができる。

しかし、生成された単細胞タンパク質と葉酸を食品として利用するには、さらなる研究が必要だ。具体的な課題として、痛風を引き起こす可能性のある物質の除去や大規模な製造システムの構築、食品としての安全性評価などが挙げられる。

テュービンゲン大学のLargus Angenent教授は、「増加し続ける世界の人口は、干ばつに悩まされ、多くの国で栄養失調の脅威にさらされている。この代替タンパク質が世界の食糧問題解決の一助となる可能性がある」と述べている。

同研究は、2024年9月12日付『Trends in Biotechnology』誌に掲載された。

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