量子ドットとMOFの複合体を用いた人工光合成でギ酸を合成 GSアライアンス

GSアライアンスは2022年4月7日、量子ドットと金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)を複合化させた独自触媒を用い、二酸化炭素(CO2)と水、太陽光エネルギーにより、人工光合成でギ酸の合成に成功したと発表した。人工光合成で作られたギ酸は、水素社会構築への寄与が期待できる。

無機金属クラスターと有機リンカーから合成されるMOFは、新しいタイプの超多孔性の有機無機ハイブリッド材料で、構造がナノメートルの分子レベルで制御できる。また、表面積が非常に大きい。MOFは近年の研究から、優れたCO2回収能力を持つことがわかっており、回収したCO2を人工光合成として応用する検討も始まっている。GSアライアンスでは、そのMOFを合成しており、CO2の吸収に最適なMOFも自社で合成している。

一方で、量子化学、量子力学に従う光学特性を持つシングルナノスケール(0.5~9nm)の超微細構造の最先端材料である量子ドットは、1個あたりの原子、分子数が数個~数千個といわれており、人工原子、人工分子ともいわれている。物質がこのサイズになってくると、量子ドットの電子エネルギー準位は連続ではなく、分離が生じ、光励起による発光波長が量子ドットのサイズに依存するような現象を示すようになる。

この量子ドットも、優れた光吸収能力、励起子を複数生成できる能力、大きな表面積を有しており、人工光合成に適する可能性のある材料として研究開発が進んでいるが、耐久性、耐水性に問題があった。

MOFと量子ドットを自社で合成しているGSアライアンスでは、この2つの最先端材料を複合化させ、最適化。量子ドットの弱点である耐久性、耐水性をMOFに取り込ませることで向上させ、ギ酸を216μmol h-1 g-1 catという高収率で合成した。

光源には、約460nm付近に中心を持つLEDライトを使用。MOFの金属触媒に、量子ドットの中で光励起された電子がスムーズに輸送されることにより、触媒活性を向上させるような相乗効果も加わっているとも推測できる。

人工光合成は、植物のように太陽光エネルギーを使い、CO2と水から有機物を生成する技術で、温室効果ガスやエネルギー資源不足に対処する技術として注目が集まっている。

脱炭素、カーボンニュートラル社会構築に向け、地球温暖化の原因とされているCO2を削減することが目標となっているが、人工光合成は、悪者であるCO2を原料として使用することで、新たな資源エネルギーを生み出し、CO2削減も同時に達成できる。現時点では、世界でも日本の研究開発が一歩リードしている。

今回、人工光合成で作られたギ酸は、水素社会構築に向けて寄与できる可能性がある。水素は特に気体で貯蔵することが非常に困難で、コストが高くなるが、ギ酸は強酸というデメリットがあるものの、液体であるため、水素と比較して貯蔵が楽で、実用化のハードルが大きく下がる。また、ギ酸を直接燃料電池の燃料とするような研究開発があることに加え、ギ酸から触媒によってその場で水素を生成させることもできる。

こうしたことから同社は現在、ギ酸の生成を主な目的として、人工光合成の研究開発を進めている。今後も収率の向上の検討を続け、人工光合成の実用化を目指す。

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