建築物の表面温度を最大25℃低下――カーボンドットを用いた放射冷却コーティングを開発 香港理工大学

香港理工大学の研究チームは2024年9月24日、建築物の屋根や壁に塗布可能な、太陽光に適応する放射冷却(SARC)コーティングを開発したと発表した。このコーティングは、エネルギーを消費することなく建築物の表面温度を最大25℃、室内温度を2~3℃低下させることができる。さらに、無毒で金属を含まないため環境に優しく、耐久性も高い。

香港では、建築物が電力消費量の約90%、炭素排出量の60%以上を占めている。そのため、建築物の省エネルギーは気候緩和の目標達成において重要だ。従来の受動放射冷却素材では、環境変化に応じて冷却能力の調整が難しく、用途に限界があった。しかし、このSARCコーティングは太陽放射照度に応じて冷却能力を調整できるため、次世代の冷却技術として期待されている。

注目すべきは、ナノサイズのカーボンドットを使用した点だ。中空ガラス粒子に均一にコーティングされたこのカーボンドットは、太陽光に適応する冷却ビーズを生成する。そして、紫外線を可視光子に効率的に変換し、実効日射反射率を向上させる。実際、SARCコーティングは日中の太陽反射率を92.5%から95%に改善し、冷却効果が10%から20%向上するという。また、希土類金属やペロブスカイト材料に依存する従来の光放射冷却材料とは異なり、SARCは揮発性有機化合物を放出しないことから、大気汚染の抑制にもつながる。

建設現場での約2年半の曝露実験では、SARCを施したコンテナハウスの屋根はコンクリートのものよりも24℃涼しい状態を維持した。太陽反射率の低下は2%未満で、耐久性が高いことも示された。

今後、同大学の学生寮の屋根にこの新しいコーティングを施した太陽光パネルを設置し、発電量を増やしながら建物を冷却する実験の計画も進行中だ。

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