ブラウン運動の数学モデルを超える――自然界のランダムな動きを説明する新しい理論を提案

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実際の自然界にある動的かつ非平衡状態における、ランダムな動きを説明できる数学モデルが開発された。

静止した液体中に浮遊する微粒子のランダムな運動として知られるブラウン運動は、アインシュタインが原子や分子の存在をベースとして数学モデルを構築するなど、基礎科学分野で大きな影響をもたらしてきた。液体が静的な平衡状態にある場合を想定したこれまでの数学モデルに対して、自然界における動的かつ非平衡状態の場合にも適用できる新しい数学モデルが、ロンドン大学クイーン・メアリー校や筑波大学などの共同研究チームにより提案された。微生物と栄養素や分解プラスチックの相互作用などの解明が、促進されると期待されている。研究成果が、2020年3月18日の『Nature』誌に公開されている。

1827年にイギリスの植物学者Robert Brownは、水中に流出した花粉粒子を顕微鏡で観察し、静止した液体中においても花粉粒がランダムな動きを起こしていることを発見した。このブラウン運動について、20世紀に入りアインシュタインが、花粉など微粒子の周りにある液体の分子運動による不規則な衝突が、ブラウン運動の原因であるとして数学モデルを提案し、科学における広汎な応用の基盤を確立した。

この画期的なモデルが、静的な平衡状態にある液体を前提としている一方、実際の自然界における液体は、コロイド粒子や微生物のように自分自身で泳動する粒子を含んでおり、それらが液体を撹拌するので理想的な平衡状態にはなっていない。そのような環境において、花粉のような受動的微粒子の運動は、拡散係数が非常に高くなり、一定時間経過後の存在確率がガウス分布に従わなくなる等、ブラウン運動とは異なる現象を示すことが観察されている。今のところ、このような動的な環境における受動的微粒子の、大規模で無秩序な運動を説明できる数学モデルがないのが現状である。

共同研究チームは、受動的な粒子と活発な泳動粒子の間の、流体力学的な相互作用を解析的に解くことにより、このような動的な環境における粒子運動に対するモデルを導出するとともに、実験観察を説明できることを実証した。「このモデルを用いて、受動的な栄養素と活発に泳動する微生物の運動を詳細に計算したところ、驚くべきことに、アホウドリが餌を効率よく探し当てる飛行方法として、1996年に提案された「Levy flight」が展開されていた」と、筑波大学の金澤輝代士博士は説明する。

更に、泳動粒子の密度がLevy flight挙動に影響を与えることも明らかにし、泳動する微生物が栄養素のLevy flightを利用して、様々な環境における最適な採餌戦略を取り得ることを提案した。即ち、高密度環境にある捕食者は、自らの活発な探索活動が望ましく、低密度環境にある捕食者は、Levy flightする栄養素が自分に近づくまで待つ戦略が有利と結論付けている。ロンドン大学クイーン・メアリー校のAdrian Baule博士は、「この研究は、微生物と栄養素や分解プラスチックの相互作用、泳動する藻類やバクテリアの採餌パターンなどについて解明できるだけでなく、物理や生物システム以外の、例えば金融市場などの非平衡状態システムにおけるランダムな動きを理解することにも役立つ」と、期待している。

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Mathematicians develop new theory to explain real-world randomness

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