ワインを利用してリチウムイオン電池の性能を高める研究

ニューサウスウェールズ大学は2024年10月3日、同大学の研究チームがワインや果物に含まれる食品由来の酸を利用した新たなバッテリー技術を開発したと発表した。従来のリチウムイオン電池よりもエネルギー貯蔵能が高く、環境への影響を低減したプロトタイプを作製し、より効率的かつ安価で持続可能なバッテリーの可能性を示した。

ほとんどのリチウムイオン電池では、電極材料にグラファイトが用いられている。この負極の材料として利用されているグラファイトは、比較的入手が難しく、採掘や精製加工が必要だ。さらに、約60%が加工段階で失われ、必要な純度を得るために高温で非常に強い酸が必要となる。

研究チームはグラファイトの代わりとして、多くの果物に含まれる酒石酸や一部の果物やワインエキスに含まれるリンゴ酸など、食品に含まれる酸由来の化合物を使用し、リチウムイオン電池のエネルギー貯蔵能を大幅に改善できる電極を開発した。電極に使用する酸は、食品廃棄物から調達できる可能性があり、環境や経済への影響も低減できる。また、処理工程で毒性のある溶剤ではなく、水を使用することも利点だ。

研究チームは、新材料の合成や新旧材料やデバイスの特性評価、リサイクルや寿命末期の劣化に関する課題まで、バッテリー寿命に関して多方面にわたり研究している。今回の斬新なアプローチは、酸がバッテリー構成部品の金属表面と実際に反応していることに気づいたことから始まった。金属と酸を混ぜると塩と水素が発生することは、化学の基礎知識だ。この塩が電池の性能向上を生み出す。

「電池の化学を理解することで、物理的特性を向上させ、エネルギー貯蔵容量やイオン電導性、構造安定性を改善することができます」と、研究チームはプレスリリースで述べている。

研究チームは、さまざまな食品由来酸と金属を試し、最も安価で入手しやすい組み合わせを探索した。開発したプロトタイプの電池は、携帯電話に使用されるものと同様の単層パウチセルで、大きさはそれよりも小さい。現在は、大型パウチセルへの移行を目標に改良を進めている。さらに、リチウムイオン電池だけでなく、より安価で環境にやさしいナトリウムイオン電池にもこの技術は応用可能だ。

関連情報

Next-gen batteries using food-based acids hit sustainability sweet spot

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る