自然界がヒント――高い機械的特性と自己センシングを備えた3Dプリント多孔質構造体を開発

英グラスゴー大学を中心とする国際研究チームは、自然界の構造から着想を得た、新しい3Dプリント材料を開発した。一般的な工業用プラスチックとカーボンナノチューブを組み合わせることで、軽量で丈夫なだけでなく、自己検知機能を持たせている。医療から航空宇宙まで、幅広い分野で利用できる可能性がある。研究結果は、2022年4月26日付けで『Advanced Engineering Materials』に公開されている。

ハチの巣、スポンジ、骨といった自然界に見られる多孔質材料は、軽量ながら丈夫といった特徴を持つ。「自然は、高性能の軽量材料を作るための特性と構造のバランスのとり方について、エンジニアに多くのことを教えてくれる」と、研究チームを率いるShanmugam Kumar博士は語る。

研究チームは、高精度の制御が可能なFFF方式3Dプリンターを使って、中規模の多孔質構造を含む複雑な構造体をいくつか作製した。フィラメントにはポリプロピレン・ランダムコポリマーと多層カーボンナノチューブを組み合わせることで、全体的な重量を減らしつつ、機械的特性を最大化することに成功した。「ポリプロピレン・ランダムコポリマーは、加工性、温度耐性、製造一貫性、衝撃強度に優れ、カーボンナノチューブは導電性と機械的堅牢性を付与する」とKumar博士は説明する。

カーボンナノチューブと組み合わせることでプラスチックに導電性が加わり、構造体に機械的な負荷を加えると電気抵抗が変わる「ピエゾ抵抗効果」という現象が生じる。これを利用し、軽量さと堅牢性を備えつつ、構造的健康を「検知」できる構造体を3Dプリントできた。

研究チームは、3種類の構造をプリントして比較した結果、平面格子を持つ立方体構造が最も効果的な機械的特性と自己検知能力の組み合わせを示すことが分かった。圧縮すると、格子構造は同じ相対密度のニッケルフォームと同様のエネルギー吸収能力を示した。同密度の複合トラス格子やエポキシハニカムなどと比べても優れていた。

新しい多孔質材料は、これまでとは違う独自の性質を備え、物理特性を操作するために細かく調整できるため、医薬、義肢、自動車、航空宇宙といった分野で新しい用途を見出せる可能性がある。例えば、脊柱側彎症を患う人が身に付けた装具のサポート具合を検知できるようにしたり、より軽量で効率的な車両用エネルギー吸収バンパーや、新しい電池電極の形状を作成するのに使えると、研究チームは提案する。

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