- 2024-10-28
- 技術ニュース, 電気・電子系
- Communications Materials, HND-2NOMe, spiro-OMeTAD, ペロブスカイト太陽電池, 太陽電池, 正孔, 正孔輸送材料, 研究, 筑波大学, 電子スピン共鳴
筑波大学は2024年10月24日、ペロブスカイト太陽電池に使われる低コスト材料HND-2NOMeの内部状態を、電子スピン共鳴でミクロな視点から調べ、局所的な電荷移動度は高いのに反してデバイス性能が低くなる理由を解明したと発表した。ペロブスカイトからHND-2NOMeへ正の電荷(正孔)が移動し、正孔が流れにくくなるエネルギー的な障壁が形成されていた。性能低下のメカニズムの解明によって、太陽電池の改良につながると期待される。
ペロブスカイト太陽電池は光エネルギーを電気エネルギーに変える効率が高く、次世代太陽電池として注目されている。しかし、正孔輸送材料として主流のspiro-OMeTADは、合成が複雑でコストが高いなどの難点があった。こうした欠点を克服するため、合成が容易で低コストな正孔輸送材料HND-2NOMeが開発されたが、電流が減少するような性能の低下が見られる弱点があり、その原因はまだ解明されていなかった。
研究グループは、電子スピン共鳴を用いてミクロな視点から内部状態を明らかにすることで、性能低下の原因を解析した。その結果、光を当てない暗条件下では、ペロブスカイトからHND-2NOMeへ正孔が移動することが観測され、これによってペロブスカイトとHND-2NOMeの界面に正孔が流れにくくなるエネルギー的な障壁が形成されるため、性能低下につながっていることが分かった。
一方、こうした障壁が形成されるものの、HND-2NOMeを用いた太陽電池では太陽光照射下での正孔の蓄積が少なく、正孔を運ぶ機能の安定に関係していることも分かった。これは、HND-2NOMeが準平面構造を持つため、局所的な電荷移動度が高いからだと考えられる。
性能は低いが機能が安定している特性は、今後デバイスの性能を向上させる作製指針を考える上で極めて重要であり、今後の研究発展に役立つ可能性がある。
研究グループは、HND-2NOMeのような準平面構造によって正孔輸送層の局所的な移動度を維持しながら、正孔輸送層のエネルギー準位をより深くすることによって正孔障壁を弱められれば、ペロブスカイト層から正孔輸送層に正孔が移動しやすくなり、高性能な太陽電池の開発につながると期待を寄せている。
研究成果は同日「Communications Materials」誌に掲載された。
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