- 2024-11-20
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- Midcontinent Rift, クリーンエネルギー, スペリオル湖, ネブラスカ大学リンカーン校, 中央大陸リフト, 五大湖, 内陸地溝帯, 化石燃料, 学術, 有機堆積物, 水素, 水素源, 温室効果ガス, 火山岩帯, 米国地質調査所(U.S. Geological Survey), 試験井戸
アメリカのネブラスカ大学リンカーン校の研究チームは2024年10月15日、五大湖の1つであるスペリオル湖の地下を起点として、ミネソタ州やミシガン州などを通る地下1500m、長さ1930kmの内陸地溝帯「中央大陸リフト(Midcontinent Rift)」に、膨大な天然の水素源がある可能性について研究し、5年前に試掘された試験井戸における調査から有望な結果が得られたと公表している。内陸地溝帯に存在する火山岩帯において、水が火山岩と反応することで生成されたクリーンな水素源で、化石燃料に対する依存性を削減する取り組みに対して、将来的に重要な役割を担う可能性を持っていると期待している。
約11億年前、北米大陸はほぼ2つに分割され、その際に中央大陸リフトと呼ばれる内陸地溝帯が形成されたとされる。スペリオル湖の地下からミネソタ州やミシガン州、ウィスコンシン州、アイオワ州、ネブラスカ州、カンザス州を通り、地下914~1524m、長さ1930kmにも及んでいる。内陸地溝帯には火山岩帯が存在し、火山岩と水が反応する際に常に水素が生成されると考えられている。
米国地質調査所(U.S. Geological Survey)の推定によれば、地球の地殻には数千万から数百億トンの水素があると推定されているが、その多くは深すぎる場所にあるか、または沿岸から遠い大洋下にあって人類には手が届かないとされている。一方で、地下1500mレベルにある中央大陸リフトにある水素源は充分に採掘可能であり、地球規模のクリーンエネルギー需要に対応できる、膨大な水素を生産できる可能性があると考えられる。
中央大陸リフトにおける水素生産の可能性を調べるために、5年前にネブラスカにおいて試験井戸が試掘され、これまでに得られたデータは有望であることがわかった。中央大陸リフトにおける地質工学的および生物地球化学的な環境条件が、自然に生成される水素の漏出や消散の歯止めになっている可能性があると考えられ、これによって「内陸地下に経済的に有効な規模で」水素が閉じ込められている、と研究チームは説明する。
研究チームは「大陸地下における水素の生成、移動、蓄積に影響する要因に関する知見は、未だ初期段階にあって非常に乏しいのが実情」と認める一方、現在、水素の移動や地下から地表に向けた漏出、水素の自然貯蔵や人工的な貯蔵システムの可能性、水素と他の流体や岩石鉱物の反応、微生物によって消費される水素量とその速さに関わるいくつかの問題について、土木工学的および生物地球化学的、微生物学的などの観点から研究を進めている。また、さまざまなデータを総合評価するコンピューターモデルも構築する予定だ。中央大陸リフトと同様の内陸地溝帯は、フランスやドイツ、ロシア、アフリカ大陸にも存在し、化石燃料が有機堆積物から数百万年もかけて生成されるのに対し、水素が水と火山岩の反応により常に再生されるので、将来的に温室効果ガスの削減とクリーンエネルギー源としての役割を担う、大きな可能性を持っていると期待される。
関連情報
Husker scientists exploring hydrogen energy potential from underground rift | Nebraska Today