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「リチウム空気電池」で960時間の寿命を達成 中国科学院

Angewandte Chemie

中国科学院(CAS)大連化学物理研究所の研究チームは2025年1月27日、これまで長寿命化が困難であった「リチウム空気電池」の試作品で、960時間の寿命を達成したと発表した。

リチウム空気(Li-O2)電池は他の電池と同じ重量で比較した場合、原理的により多くのエネルギーを蓄積できる。理論的には、リチウムイオン電池を凌駕する性能を持つとされているが、これまで実証できていなかった。

リチウムイオン電池の場合、リチウムイオンを2つの電極間で「押し合う」ことで動作する。リチウム空気電池ではこれとは対照的に、金属リチウムを負極として使用する。電池の使用中は、プラスに帯電したリチウムイオンが溶解し、空気が流れる多孔質の正極に移動する仕組みだ。

放電時には、正極では酸素と結合し、過酸化リチウム(Li2O2)を生成する。充電時には、逆に酸素を放出し、リチウムイオンは還元されて金属リチウムに戻り、負極に析出する。

しかし実際には「過電位」という現象が、電気化学反応の速度を遅くしている。不溶性のLi2O2は生成と分解が遅く、導電率も相対的に非常に低い。さらに、正極の細孔は詰まりやすく、酸素の生成に必要な高電位は電解液を分解するため、望ましくない副反応を引き起こす。この副反応が起こると、バッテリーはわずか数回の充放電で性能の大半を失ってしまう。

この課題に対して研究チームは、電解液に可溶性の触媒を加える方法を提案した。この触媒は、イミダゾールヨウ化物塩(1,3-ジメチルイミダゾリウムヨウ化物:DMII)で電荷輸送を促進し、電極の不動態化を抑制する「酸化還元メディエーター」として作用する。

塩に含まれるヨウ化物イオン(I)は、簡単に反応して三ヨウ化物(I3)を形成し、また元の状態に戻る(酸化還元対)。この過程で、ヨウ化物イオンは電子を酸素に移動させ(放電)、再び電子を取り込む(充電)。この電荷輸送の促進は反応を加速し、カソードの過電位を下げ、電気化学セルの放電容量を増加させる。

塩から発生するDMI+イオンは、3個の炭素原子と2個の窒素原子からなる環を含む。このリングは、自由に移動できる電子を持ち、放電中にリチウムイオンを捕獲して、正極の酸素に効果的に移動させる。

さらにDMI+イオンは、負極上に安定した極薄の界面膜を形成することで、電解液とリチウム表面の直接接触を防ぎ、副反応を抑制する。研究チームは、これらの過程により負極が安定し、電池が長寿命化するとしている。

研究チームが製作した電気化学テストセルは、0.52Vという低い過電位と、960時間にわたるサイクル安定性、副反応のない可逆性の高いLi2O2の生成/分解を実証した。

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