- 2025-3-18
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- GPS(Global Positioning System), Nature Photonics, クロック信号, チャルマース工科大学, パデュー大学, フォトニック集積技術, マイクロコーム技術, 光原子時計システム, 学術, 自己参照

Photo and illustration: Kaiyi Wu
米パデュー大学とスウェーデンのチャルマース工科大学の研究チームは2025年2月21日、光原子時計システムを大幅に小型化し、精度を1000倍に高めるGPS(Global Positioning System)の構成技術を発表した。この研究成果は、『Nature Photonics』誌に掲載された。
光原子時計は、携帯電話、コンピューター、GPSにおいて、時間と地理的位置の精度を1000倍に高める技術だ。しかし、現在の光原子時計の寸法は巨大で、社会に普及させるためには、いかに小型化して構造を簡略化するかという課題があった。
両大学の研究チームは、オンチップ「マイクロコーム」技術を利用して、超高精度の光原子時計システムを大幅に小型化する方法を考案した。このマイクロコームは、くしのように均等に分散した光周波数のスペクトルを生成する。
この特性は、くしの1本に相当する周波数の1つを、レーザーの周波数にロックすることができ、その周波数が原子時計の発振にロックされると研究チームは説明している。
光原子時計の発振周波数は数百THzで、これは電子回路では直接把握できない。しかし、このマイクロコームチップは、原子時計の光信号と振動をカウントすることで、電波との橋渡しができる。さらに、マイクロコームの寸法は、原子時計の精度を維持したまま、原子時計のシステムを大幅に縮小できるほど小型である。
システム全体の安定化に必要な「自己参照」の特性を同時に達成することと、マイクロコームの周波数を原子時計の信号と正確に同期させることが大きな課題となっているが、研究の結果、マイクロコームの数は1つでは不十分で、2つのコームをペアにすることで問題を解決した。
隣接するコームの「歯」の周波数間隔は近いが、オフセットは例えば20GHzと小さい。このオフセット周波数は、電子的に検出可能なクロック信号として機能し、原子時計からの正確な時刻信号をより利用しやすい電波に変換できる。
このシステムは、かさばるレーザー光学系ではなく、チップベースのフォトニック集積技術を用いる。これにより、周波数コーム、原子光源、レーザーといった光原子時計の光学部品を、マイクロメートルからミリメートルのチップ上に集積できる。研究チームは、この実装技術によってシステムの寸法と重量を大幅に削減できると期待している。