グラフェンとシリコンを結合させた高速デバイスを開発――シリコン半導体の限界を超える

既存のシリコンのPIN接合界面に、グラフェン層を側面から結合させることにより、高速で光電子効果を有するデバイスが開発された。

デラウェア大学の研究チームが、携帯電話やコンピューター間の高速通信を可能にする、グラフェン-シリコン高速デバイスを開発した。シリコンのPIN接合に、グラフェン層を結合することにより、デバイスの応答性を向上するとともに光電子効果を付与することを可能にする。既存のCMOSデバイスをベースとして、グラフェン層を側面から結合するだけであり、将来的に安価で高速なワイヤレスデバイスの製造に発展できると期待されている。研究成果は、2019年1月22日に『ACS Applied Electronic Materials』誌で論文公開されている。

今日、エレクトロニクスデバイスに広く使用されているシリコン半導体は、機能的にほぼ限界に達していると言われている。その制約要因は、電荷キャリアの移動度、および光の放出または吸収を制約する間接遷移にあると言える。そこで研究チームは、シリコンに、優れた特性を有する2Dグラフェン材料を構造的に結合することで、シリコンデバイスの高性能化を試みた。2Dグラフェンは、高いキャリア移動度と直接遷移を有するので、電子伝導が高速であるとともに優れた光電子効果を示す。

2018年に考案した手法により、p型半導体とn型半導体の間に真性半導体を挟んだシリコンのPIN接合界面に、グラフェン層を側面から結合させたところ、サブテラヘルツ帯域の無線波を、ピコ秒以下で伝送できる可能性を把握した。また、シリコンとグラフェンの結合デバイスは、光を検知して電流を生成する光検出器として用いることができることも確認された。この光検出器は、現行製品よりも広い帯域および高い応答性を有する。また、この製造プロセスは簡便かつ一般的なもので、12インチウェハーのCMOS構造上で実施でき、デバイスの安価な製造に繋がる。

現在、研究チームは、このプロセスの適用可能な材料範囲を拡大することを考えている。電気コンピューター工学科のTingyi Gu助教授は「類似した構造をベースとした、部品を検討している」と語る。「これらの研究成果によって、将来的に安価で高速のワイヤレスデバイスが登場し、ネットワークの高速化と安価化を実現できるだろう」と、研究チームは期待している。

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ENGINEERING FOR HIGH-SPEED DEVICES

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