- 2025-3-19
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- 3Dプリント, ゲント大学, ハイドロゲル, 学術, 宇宙, 宇宙服, 宇宙船, 宇宙飛行士, 放射線, 放射線遮蔽, 欧州宇宙機関(ESA), 水, 水素原子, 高吸水性ポリマー(SAP)

ベルギーのゲント大学の研究チームが、宇宙の放射線を水で遮蔽でき、宇宙服や宇宙船などのさまざまな形状に加工できる汎用性のある技術を開発した。同研究成果は2025年2月6日、欧州宇宙機関(ESA)のプレスリリースにて発表された。
宇宙では機器や宇宙飛行士は高レベルの放射線にさらされるため、十分な保護がなければ、機器は故障し、宇宙飛行士は深刻な健康リスクに直面する。そのため、有害な放射線を遮蔽する方法が求められている。
水は高密度の水素原子により放射線を減衰させるため、放射線遮蔽に優れている。しかし、自由に流動する水を遮蔽に使用すると、宇宙服の動きを制限し、不均一な分配により防護を損ない、漏れの危険もある。
ハイドロゲルは、大量の水分を吸収/保持できる素材であり、コンタクトレンズから紙おむつや生理用品まで、日常品として利用されている。ハイドロゲルの水分を保持する性質を利用すれば、居住空間や宇宙服の放射線遮蔽に有用だ。さらに、流動性のない水の性質は、均一な保護を保証し、欠陥からの漏れを防ぐ。
研究チームは、水よりも安全で効果的な放射線遮蔽材として、高吸水性ポリマー(SAP)を選択した。SAPは、ポリマー重量の何倍もの液体を吸収してハイドロゲルになる。研究チームは、3Dプリントを使用し、ハイドロゲルを自由な形に加工することに成功した。3Dプリント技術は、宇宙服や宇宙船に最適な形状やサイズの作製を可能にする。研究チームは、宇宙船と月面の宇宙飛行士の3Dモデルをハイドロゲルで作製し、宇宙用途のさまざまな形状に加工できる同技術の汎用性を示した。
同研究のプロジェクトリーダーであるPeter Dubruel氏は、「軽量な放射線防護材料は常に探索されています。われわれの研究は、ハイドロゲルが宇宙環境下でも安全に使用できることの実証に成功しました。さらに、さまざまな技術を応用して材料を3D構造に成形し、製造工程を拡張することで、工業化に一歩近づけます」と説明した。