”光を放つ鉄”を開発――ルテニウムの代替に? 発光時間は100ピコ秒だが「十分な時間」

スウェーデンのルンド大学は2017年3月30日、光を放つ鉄ベースの分子を作製することに初めて成功したと発表した。太陽電池や光源、ディスプレイなどに利用できる素材の開発につながる可能性があり、鉄ベースであることから低価格で環境に優しい素材になると見込んでいる。

同大学の研究チームは、最先端の分子設計によって、電子的な性質を操作した鉄ベースの色素分子を作製。ルテニウムをベースとする物質と共通点が多くなるようにしたところ、光を吸収するのに加えて、別の色で発光する性質も持つようになったという。

「中世の錬金術師は、他の物質から金を生み出そうとしたが失敗に終わった。私たちはルテニウムに似た性質を鉄に与え、現代の錬金術に成功したと言ってもらって構わないだろう」と同大学のKenneth Warnmark教授はコメントしている。

同研究チームが「Nature」に掲載した論文によると、鉄の錯体が100ピコ秒にわたって光を吸収して発光したという。非常に短い時間ではあるが、これまでの記録を破ることになり、同研究チームのVilly Sundstrom教授によると「化学の世界では、分子が発光するには十分な時間である」ということだ。

今回の研究成果によって、光源やディスプレイ、太陽電池の光吸収体、光触媒などに利用できる発光材料を実現できる可能性がある。研究チームは実用化に向けて、さらに鉄ベースの分子を改善するための研究開発を継続する考えを示している。

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