本コラムは、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストのキャリアコンサルタント・河辺真典氏からの寄稿です。旬のキーワードを取り上げ、エンジニアのキャリア形成に役立つ情報を発信していきます。
製造業エンジニアを採用したいという企業のニーズは、ここ数年、高止まりを続けています。
前回までの記事で紹介してきたように、転職を検討する製造業エンジニアにとっては、選択肢が非常に多くなっている状況です。他業種への転職も十分に可能性があり、迷ってしまうほどの選択肢がある中で、腰を据えて働ける企業をどうやって選んでいけばいいのでしょうか。
今回は、仕事内容だけでなく、製品分野や企業風土をチェックしながら転職先を考え、時には他業種への転職も含めて検討することの大切さについて、お伝えしていきたいと思います。
製造業エンジニアが転職するなら、長期スパンで働ける職場か、しっかり見極めて
同じエンジニアであっても、IT系のエンジニアなら、職場に不満を持ったときに「2年がかりの今のプロジェクトが終わったら転職しよう」と決断しやすい職種だと言えます。
IT系エンジニアは転職したとしても、新しい職場で新しいプロジェクトを任されて、比較的スムーズに業務に入っていけることでしょう。
けれど、製造業エンジニアはIT系エンジニアのようにはいきません。「今年、発売したこの製品を、2年後にはこうやってバージョンアップしよう」など、10年先まで見据えて開発している職場もあります。製品を製造する工場にしても、長期的な視野に立って投資計画を立てているわけです。
「この製品を開発したい」と思って入社したら、たとえ製品を発売したとしても「ここに不満があるから改善したい」「次回のアップデートでこんな機構・機能を追加したい」といった欲が出てきてしまうのが、製造業エンジニアというものでしょう。長期的なスパンで携わらないと、なかなか自分が思い描いていたような製品を完成させられません。IT系エンジニアほど、そう気軽に何度も転職するわけにはいかないのです。
ですから私は、製造業エンジニアが転職先を探すときには、「しっかりと腰を据えて長期スパンで働ける職場かどうか」と見極めてから転職先を選ぶようにしてほしいと願っています。
業種によって大きく違う製造業エンジニアの働き方
どんな職場なら腰を据えて働けるのか。それを考える上で、1つの判断材料になるのが業種や企業風土だと思います。
例えば、医療機器の開発を担当していたら、製品のモデルチェンジやアップデートは、かなり自社のペースで進めていけます。大きな技術革新が頻繁に起きる分野ではありませんので、同業他社の動向をそれほど気にする必要はありません。製品のコンセプトやモデルチェンジのタイミングについて、自分たちで決めやすい環境にあると言えるでしょう。業務の進め方にしても、比較的マイペースでやることが許されやすくなります。
一方、自動車メーカーで働いていたら、「次の製品について自分たちで決める」なんてことは言っていられません。同業他社が電気自動車や自動運転システムを搭載した自動車を次々と発売しているのに、自分たちだけ、いつまでも従来型の自動車だけを開発しているわけにはいかないでしょう。
製造業エンジニアは長期スパンで働く職種だと言っても、「○年後に新型車を発売するために、今年中にここまでは開発しておかないといけない」といったように、スケジュールに追われることもあります。
まずは業種をマクロで理解して、他業種も含めて検討すべき
このように、同じ設計の仕事であったとしても、業種や企業風土によって、製造業エンジニアの働き方は大きく変わってきます。
自分の担当する業務だけをミクロで見て「やりたい仕事ができる職場かな」と判断するのではなく、「自分が働いている業種、興味を持っている業種は、どんな市場になっているか」ということをマクロで理解しておかないと、入社してからミスマッチに悩まされることにもなりかねません。
とはいえ、医療機器を開発していても、完成間近の時期には仕事が忙しくなるわけです。別角度から見ると、自動車メーカーで働くエンジニアは、医療機器メーカーほどマイペースに働けないかもしれませんが、技術革新が今まさに進行中であって、刺激が多い職場だと言うこともできます。
どのくらいの業務負荷を許容できるのか、どんな状況にストレスを感じるのか、どんな刺激を求めているのか、どうキャリア/スキルアップしたいのか。同じ製造業エンジニアでも1人1人によって状況は違うと思います。ミクロな視点で個々の求人を精査していくのもいいですが、まずはマクロな視点で自分が志望する業種を取り巻く環境を考えてみてください。
同じ業種の中で転職していては、自分が不満に感じている根本的な要因を取り除けず、またすぐに転職を考えることにもなりかねません。そう気軽に転職するわけにもいかない製造業エンジニアこそ、自分の取り扱う製品とは別の業種、他業種メーカーへのキャリアチェンジも視野に入れて活動してみるのもいいと思います。
河辺 真典(メイテックネクスト 代表取締役社長)
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