ポート数10万超の光スイッチで毎秒1.25億ギガビットの情報を伝送――次世代情報インフラへの応用に期待 産総研

産業技術総合研究所(産総研)は2021年6月4日、産総研プラットフォームフォトニクス研究センターで開発したシリコンフォトニクス光スイッチ(以下、光スイッチ)を使い、13万1072ポートの光スイッチネットワークにおいて光スイッチ総容量1.25億ギガビット毎秒を達成したと発表した。ブルーレイディスク60万枚以上の情報を1秒間に伝送できる容量に相当し、世界最大となる。

産総研は、電気スイッチを介さずに光のまま経路を切り替える光スイッチを使った「ダイナミック光パスネットワーク」を提唱。その実現に向け、シリコンフォトニクスと呼ばれる光集積化技術を用いた光スイッチの開発を進めている。2016年には、産総研が持つ大規模光集積技術を使って、世界最大(当時)の32×32ポート光スイッチの開発にも成功している。

今回は、このシリコンフォトニクス32×32ポート光スイッチの性能を最大限発揮するための妨げとなっていたポート間クロストークの影響を詳細に解析するため、実験による検証を行った。

実験では、標準的な誤り訂正符号を想定した光信号を用意し、この信号を32×32ポートの光スイッチネットワークを6~9周伝送させ、6~9段の光スイッチと想定して信号の波形などを測定した。その結果、誤り訂正技術によってクロストークの影響を抑えることができれば、信頼性の高い信号伝送が可能となることが分かった。また、32×32ポート光スイッチのポートを全て占有した場合のエネルギー効率は、1スイッチ当たり0.06 pJ/bitで、最先端の電気スイッチを用いたClos構成より100倍以上高いことも確認された。

これらの結果を基に、13万1072ポートの光スイッチネットワークを使った実験を行い、総容量1.25 億ギガビット毎秒を達成した。

現在、次世代大規模データセンターやスーパーコンピューターなど次世代情報インフラの実現に向けた研究が世界中で進められているが、電気スイッチよりもエネルギー効率や信頼性、量産性に優れる光スイッチに対する期待が高まっている。小規模光スイッチを多数使うことでスイッチの大規模化が可能だが、大規模化に伴いクロストークの影響が大きくなる点が実用化への障害となっていた。

産総研では、今回の実験結果は「コンピューティング領域などにおいて大容量データの転送経路を高速に切り替える場面で非常に有用である」とし、ポート数の大規模拡張が可能になれば、電気スイッチの負荷軽減によりスーパーコンピューターなどの高性能化と省電力化の両立が期待できるとして、光スイッチのポート数や総容量のさらなる拡大を目指す。

この技術の詳細は、2021年6月6日~6月10日にオンラインで開催される光通信関連の国際会議「The Optical Networking and Communication Conference & Exhibition 2021 (OFC2021)」で発表される。

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