英エクセター大、光パルスで超高速演算するナノスケールの「光学式そろばん」を開発

最も原始的な計算手法の1つが、ナノスケール光そろばんとして、21世紀に大変身することになる。

英エクセター大学のC. David Wright教授を含む国際研究チームが、光パルスを使用して演算するナノスケールの光学式デバイスを考案した。電子よりも高速な光パルスを使って演算すると同時に、従来の「そろばん」のように結果をメモリーすることもできるので、超高速コンピューター開発に応用できる技術として期待されている。研究成果は、2017年11月2日の『Nature Communications』誌において公開されている。

この革新的なデバイスは、旧来のそろばんで木製の珠(たま)が使われたのと同じように、光パルスを珠として利用する。電子工学の専門家であり、論文の共同著者であるC. David Wright教授は、「このデバイスは、加減乗除という伝統的なそろばんが備える全ての機能を実行できる。革新的なのはピコ秒(1兆分の1秒)の光パルスを使って超高速演算できることだ」と説明する。

論文の主著者の独ミュンスター大学物理研究所のWolfram Pernice教授は、「この革新的なデバイスは、純粋に光学的に作動する初めてのそろばんで、光パルスを使った演算とその演算結果を同時にメモリーすることができる」と、その特徴を説明する。これはプロセッサーによる演算とメモリーによる記録を分けて考える従来のコンピューターとは異なるものになる。

「光学式そろばん」と呼べるこのデバイスは非常に小型で、そろばんのように目には見えないが、簡単に製造できるマイクロチップに搭載できる。近年光デバイスとして活発に研究されている、光パルスにより相変化する材料を用いる相変化メモリーのネットワークをそろばんの珠として活用することで、そろばんと同じように演算とメモリーを1つの要素に統合することができる。

研究チームは、2個の光相変化セルを用いて2桁の演算に成功しているが、より多くのセルを使えば、大きな多数桁の数への展開は簡単に行えると期待している。

共同著者であり、オックスフォード大学のHarish Bhaskaran教授は、「従来のコンピューターと異なり、電子ではなく光パルスを使って演算するこのデバイスでは、光導波路を使って集積することで、高速で強力なコンピューターシステムを開発できることを意味する」と語っている。

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