米シカゴ大学、3Dプリントを高速化するアルゴリズムを開発

アメリカのシカゴ大学機械工学科の博士課程の学生とChinedum Okwudire准教授は2017年10月31日、3Dプリンターの造形品質を落とすことなく、造形時間を一般的な3Dプリンターの半分に短縮するソフトウェアアルゴリズムを開発したことを発表した。

3Dプリンターの造形精度を大きく左右する要因のひとつは、造形中の可動部に発生する振動だ。造形速度を上げようとして高速化すると振動が増大し、造形品質が下がってしまう。これを防ぐため、造形品質が落とすことなく最大速度を維持できるような最適制御をおこなうことが重要になる。

3Dプリンター可動部の「軌道」を予測し誤差を最小にするフィードフォワード制御では、可動系を安定した線形システムとして未知の係数を含むBスプライン基底関数に順方向に分解してモデル化し、各基底関数の係数を全体としてのトラッキングエラーが最小となるように決定する必要がある。

これに対しOkwudire准教授らが開発したアルゴリズムでは、Bスプラインの局所的な特性について、「Receding Horizon制御」により係数を再帰的に計算する「限定プレビューFBS(Filtered B Spline)」と呼ばれるアプローチを提案している。これにより、従来のフルプレビュー手法よりも少ない演算コストでDプリンター可動部の動きを予測し、最適の3Dプリンターの制御信号を決定することができるという。この限定プレビューFBSアプローチの実用性と有効性は、ステッパーモーター駆動式3Dプリンターにおいて、構造的な振動が引き起こすトラッキングエラーのオンラインフィードフォワード補正に使用し、実証できたとしている。

Okwudire准教授は、このアルゴリズムについて、「大きなホールでスピーチをする場合、話者は最後方にいる聴衆にも聞こえるように叫ばなければならず、それは聴衆には聞きづらいスピーチになる。しかし、スピーカーがあった場合、話者は適切な大きさで話せば声が届くことを認識している。私たちが開発したアルゴリズムは、スピーカーによって自身の声の大きさが大きく増幅されることを予め知っている話者のように機能するものだ」と例え、説明している。

このアルゴリズムは既存の3Dプリンターのファームウェアに組み込むだけで利用でき、ハードウェアをアップグレードする必要もない。コンシューマー向けモデルでも産業向けモデルでも造形品質を保ったまま、印刷時間を短縮できるという。

なお、この研究成果は「Mechatronics」に論文「A limited-preview filtered B-spline approach to tracking control – With application to vibration-induced error compensation of a 3D printer」として掲載されている。

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