CERN大型ハドロン衝突型加速器で初めてニュートリノ反応候補を検出

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Photo courtesy of CERN

ForwArd Search ExpeRiment(FASER)国際共同実験グループは、スイスのジュネーブ近郊にある欧州合同原子核研究機構(CERN)で、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)が生成するニュートリノ反応候補の検出に初めて成功した。このグループは9カ国21大学/機関に所属する物理学者76名で構成されており、日本からは、九州大学、千葉大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、名古屋大学の研究者らが参加している。この研究の成果は、2021年11月24日付で『Physical Review D』に掲載された。

その掲載論文では、2018年にエマルションフィルムを採用した小型ニュートリノ検出器をLHCに設置し、そのパイロットラン中に、6つのニュートリノ反応を観測したことが説明されている。このプロジェクト以前には、衝突型加速器(コライダー)でニュートリノの兆候が観測されたことはなかった。

パイロットランで使用された検出器は、鉛とタングステンの板をエマルションフィルムの層と交互に重ねたものだ。LHCで粒子が衝突する際に、生成されたニュートリノの一部が高密度金属中の原子核に衝突して粒子を生成し、その粒子がエマルションフィルム層を通過して、処理後に目視できる痕跡を残す。このようなエッチングは、粒子のエネルギーや、ニュートリノの3種類のフレーバー(タウニュートリノ、ミューニュートリノ、電子ニュートリノ)、そしてそれらがニュートリノか反ニュートリノかを知る手がかりとなる。

ここでエマルションは、デジタルカメラが登場する以前、35ミリフィルムを使って撮影していた時代の写真とよく似た仕組みで機能しており、研究者らが検出器からエマルションフィルムを取り出して現像すると、フィルムに浮かび上がるニュートリノ反応を見ることができた。

このパイロットランで得られた発見は、極めて重大な情報を2つもたらした。1つ目はLHCのATLASビーム衝突点の前方が、コライダーニュートリノの検出位置として正しいことが立証されたことで、FASER実験は衝突点から480メートルの位置にある。2つ目は、この種のニュートリノ反応を観測するためにエマルション検出器を使用することの有効性が実証されたことだ。

これを受けて、FASER国際共同実験グループは現在、より大型で感度が大幅に向上した完全な装置を使う新しい数々の実験を準備しているという。パイロットランで使用された検出器の重さは約64ポンド(約29kg)だったのに対し、FASERν装置は2400ポンド(約1100kg)以上になる予定で、ニュートリノの種類を区別できるようになる。とりわけ、3つのフレーバー全てとそれぞれの反ニュートリノを観測できる点が独特で、1種類または2種類のニュートリノしか区別できない他の実験とは異なっている。

この新しい検出器の性能と、CERNでの最高の設置場所を考慮すると、2022年に始まるLHCの次回運転では、1万個以上のニュートリノ反応が記録できると期待される。中でも、これまでに人工的に作り出したニュートリノの中で、最も高いエネルギーのニュートリノを検出するだろうと予測されている。また、人類史上、タウニュートリノの観測は10回程度しか成功していないが、今後3年間の実験でその数を2倍から3倍に増やせると期待されている。

関連リンク

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